山形大学循環・呼吸・腎臓内科学の長谷川寛真氏

 冠動脈不安定プラークの特徴的な兆候といわれる陽性肥厚(陽性リモデリング)の進展を、LDLコレステロール(LDL-C)/HDLコレステロール(HDL-C)比および総コレステロール(TC)/HDL-C比で予測できる可能性が報告された。山形大学循環・呼吸・腎臓内科学の長谷川寛真氏らが自施設の臨床データを基に解析した結果で、7月15日から開催されていた日本動脈硬化学会(JAS2011)で発表した。

 TCおよびLDL-Cの高値、HDL-Cの低値は心血管疾患のリスク因子と考えられてきた。しかし近年は、non HDL-CやLDL-C/HDL-C比、TC/HDL-C比などが、より大きな心血管疾患の影響因子であることが示唆されている。一方、陽性肥厚を伴う冠動脈プラークは、陽性肥厚を有さないプラークに比較して、脂質やマクロファージの量が多く、組織学的に不安定なプラークであるとされ、急性冠症候群(ACS)の発症リスクがより高いことも報告されている。しかし、粥状硬化病変のリスク因子は数多く示唆されているのに対し、陽性肥厚の進展の予測因子はいまだに明らかにされていない。そこで長谷川氏らは、脂質に着目し、陽性肥厚を予測し得る脂質パラメータの抽出を試みた。

 対象は、多列検出器型CT(MDCT:multi detector-row CT)による冠動脈造影を施行した患者207例(男性145例)。そのうち127例が虚血性心疾患を有し、80例がその既往歴を有していた。平均年齢は62.7±15歳。

 本検討では、冠動脈CTの横断像からプラーク病変部の血管断面積を計測し、それを正常部の血管断面積で除して1.05を超えた場合を陽性肥厚と定義した。その結果、34例が陽性肥厚を有すると判定された。

 陽性肥厚を有する34例と有さない173例の各脂質パラメータを比較すると、陽性肥厚群の方がトリグリセリド(TG)、LDL-C、non HDL-C、LDL-C/HDL-C比、TC/HDL-C比は有意に高く(p=0.0374、p=0.0394、p=0.0118、p=0.0001、p<0.0001)、HDL-Cは有意に低値だった(p=0.0091)。

 次に各パラメータを単変量ロジスティック回帰分析し、心血管疾患のリスク因子とされる年齢、性、高血圧、糖尿病、喫煙習慣で補正した陽性肥厚群のオッズ比を算出したところ、LDL-Cが1.82(95%信頼区間1.17−2.81、p=0.0059)、non HDL-Cが1.93(同1.28−3.01、p=0.0021)、LDL-C/HDL-C比が1.96(同1.32−2.89、p=0.0008)、TC/HDL-C比が2.04(同1.37−3.02、p=0.0004)となり、これら4つが有意に高い影響因子であることが示唆された。

 さらに、これら4項目をROC曲線下面積(AUC)で評価したところ、LDL-Cは0.59、non HDL-Cは0.62、LDL-C/HDL-C比は0.69、TC/HDL-C比は0.70となり、LDL-C/HDL-C比とTC/HDL-C比の影響度が相対的に大きいことが確認された。

 また、LDL-C/HDL-C比は、1.5〜2.0が管理目標とされる。そこで、対象をLDL-C/HDL-C比で1.5未満、1.5以上2.0未満、2.0超の3群に分け、それぞれの陽性肥厚のオッズ比を算出したところ、1.5未満群に対する2.0超群のオッズ比が5.85となり、この比が有意な影響因子であることが再確認された(p=0.0037)。

 これらの検討結果を踏まえ長谷川氏は、「LDL-C/HDL-C比およびTC/HDL-C比がいずれの検討でも強く陽性肥厚と関連していた。これらを陽性肥厚の予測パラメータと考えてよいのではないか」と総括した。

(日経メディカル別冊編集)