京都大学の荒井秀典氏

 低比重リポ蛋白(LDL)の中でも小型かつ比重の高い亜分画であるsmall dense LDLは、動脈硬化性疾患との関連がより高いリポ蛋白として注目されている。この分画に含まれるsmall dense LDLコレステロール(sd LDL-C)値の上昇は、心血管疾患の既往のない日本人の集団においてもリスク因子となることが、大阪府吹田市の一般住民を対象とする吹田研究から明らかになった。7月16日まで札幌市で開催されていた日本動脈硬化学会(JAS2011)で、京都大学の荒井秀典氏らが報告した。

 吹田研究は、1989年9月〜1994年3月に国立循環器病センター(現・国立循環器病研究センター)で定期検診を受けた受診者の中で、心血管疾患の既往のない30〜79歳の男女6485人を登録し、平均11.7年間追跡した都市型住民対象の疫学研究だ。荒井氏らは今回、LDL-C値、sd LDL-C値、LDL-C値からsd LDL-C値を差し引いたlarge LDL-C値などと冠動脈疾患との関連を検討した。

 対象者は、吹田研究登録者中、保存血液が得られた2034人。sd LDL-C値により四分位し、男性はQ1群(6.3〜27.8mg/dL、241人)、Q2群(27.9〜38.2mg/dL、243人)、Q3群(38.3〜53.4mg/dL、242人)、Q4群(53.5〜119.6mg/dL、242人)に、女性はQ1群(7.5〜23.9mg/dL、266人)、Q2群(24.0〜33.0mg/dL、267人)、Q3群(33.1〜44.6mg/dL、266人)、Q4群(44.7〜136.6mg/dL、267人)に、それぞれ分類した。

 これら各分位における心血管疾患、脳卒中、脳梗塞、冠動脈疾患発症のハザード比(HR)を、sd LDL-C値が最も低値であるQ1群を基準に算出し、比較した。各HRは、年齢補正および多変量補正の2つの数値を求めた。

 男女合わせた全体の解析では、sd LDL-C値の増加とともに4疾患すべてでHRが高まる傾向にあり、心血管疾患と冠動脈疾患では、年齢補正および多変量補正の両方で有意な上昇トレンドが確認された(年齢補正:p trend=0.004、p trend=0.001、多変量補正:p trend=0.014、p trend=0.003)。

 特にsd LDL-C値が最も高いQ4群のHRは、心血管疾患の年齢補正で1.64、冠動脈疾患の年齢補正で3.35、多変量補正で3.26と、いずれも有意に高値だった。

 性別の解析では、男性は全体と同じ傾向で、sd LDL-C値の上昇と心血管疾患および冠動脈疾患のリスクは、有意な関連が見られた。女性でもその傾向は認めたものの、イベント数が少ないため統計学的な有意差には至らなかった。

 一方、LDL-C値の四分位の解析では、男性における心血管疾患の多変量補正値(p trend=0.037)と、冠動脈疾患の年齢補正値(p trend=0.023)および多変量補正値(p trend=0.017)で、有意な関連を認めるにとどまった。また、large LDL-Cの4分位の解析では、各疾患のHRとの間に有意な関連は認めなかった。

 さらにsd-LDL-C/LDL比の四分位で解析したところ、心血管疾患のハザード比は年齢補正(p trend<0.001)、多変量補正(p trend=0.003)ともに有意な上昇トレンドが示され、Q4のHRは2.82および2.51と、有意な高値を示した。

 sd LDL-C値では有意な関連を認めなかった女性でもsd LDL-C/LDL比を用いた解析では、年齢補正値および多変量補正値ともに、心血管疾患(p trend=0.003、p trend=0.010)、脳卒中(p trend=0.017、p trend=0.022)、脳梗塞(p trend=0.021、p trend=0.022)で、有意な関連を認めた。

 以上の検討から荒井氏は「心血管疾患の既往がない日本人でも、sd LDL-C値の上昇により冠動脈疾患のリスクが高まる可能性がある。同時に、sd LDL-C/LDL-C比が、冠動脈疾患の有意な予測因子となり得ることも男女ともに確認された。今後の課題として、sd LDL-Cの日本人の管理目標値を確立すべく、大規模な介入研究が必要と思われる」と総括した。

(日経メディカル別冊編集)