大阪大学大学院内分泌・代謝内科学の岸田堅氏

 VACATION-Jは、厚生労働省の内臓脂肪研究班が実施した全国規模の横断・縦断研究だ。7月16日まで札幌市で開催されていた日本動脈硬化学会(JAS2011)で、大阪大学大学院内分泌・代謝内科学の岸田堅氏はVACATION-Jの結果を紹介。心血管リスク因子が1以上集積する内臓脂肪面積VFA)は年代や性別にかかわらずほぼ100cm2を基準とできること、VFAを指標とした介入は心血管リスク集積の予防策として効果的であることを発表した。

 VACATION-Jには日本人間ドック学会の協力の下、全国9施設が参加し、人間ドック健診でCT検査によるVFA測定を受けた受診者が登録された。横断研究の対象者は1万2443人で、その内訳は男性1万80人(平均年齢51.7歳)、女性2363人(同53.8歳)で、メタボリックシンドロームの診断基準にある肥満関連心血管リスク因子(血圧高値、血糖高値、脂質代謝異常)の保有状況は、なしが男性30.2%、女性49.5%、1つがそれぞれ37.5%、27.3%、2つがそれぞれ24.8%、19.0%、3つがそれぞれ7.5%、4.2%だった。

 VFA中央値は男性115.9cm2、女性74.2cm2で、男女ともにVFAの増加とともにリスク因子の平均保有数は上昇しており、リスク因子の平均保有数が1を超えるVFAの閾値は、男女ともに約100cm2だった。

 一方、加齢に伴って男性ではVFAは増加するが皮下脂肪面積SFA)は減少、女性ではVFA、SFAともに増加していた。そこで対象を55歳で層別化、または肥満(BMI 25kg/m2以上)の有無で層別化して検討したが、VFAが約100cm2を超えたときにリスク因子の平均保有数が1を超えるという傾向は変わらなかった。

 55歳未満の女性ではVFA中央値は59.8cm2と少なかったが、VFAの増加に伴うリスク因子保有数の増加、VFAが100cm2を超えるとリスク因子の平均保有数が1を超えるという傾向は同様に認められた。

 一方、SFAの増加とともにリスク因子保有数も増加したが、その関連性はVFAに比べると弱く、皮下脂肪の蓄積はリスク因子の集積にあまり関与しないのではないかと考えられた。

 なお、ROC(Receiver Operating Characteristics)解析を行い、リスク因子保有数2つ以上を予測するVFAのカットオフ値を求めたところ、男性では121.67cm2、女性では85.63cm2のときに最も予測能は高くなったが、その感度、特異度はともに65%程度と限定的だった。

 次に、VFAの増加あるいは減少がリスク因子保有数にどのような影響を及ぼすかを検討した。この縦断研究の対象者は、75歳未満で治療薬を服用していない5347人(男性4676人、女性671人)だった。

 対象者には、保有するリスク因子に応じて人間ドック健診後に減量指導、生活指導、禁煙指導が行われた。その結果、翌年の健診では体重、VFAおよびSFA、血圧、血糖値、血清脂質値などが有意に改善し、その効果はVFAの高値例でも低値例でも一貫して認められた。

 対象をVFAの減少群、不変群、増加群に分け、不変群を対照として保有するリスク因子数が増減するオッズ比を求めたところ、VFAが100cm2未満の症例ではVFAを減らしてもリスク因子保有数は減少しなかったが、VFAが増えるとリスク因子保有数は有意に増加すること、VFAが100cm2を超えた症例のリスク因子保有数はVFAを減らせば減少し、VFAが増えれば増加することが明らかになった。

 以上の検討から岸田氏は、VFAに基づく心血管イベント抑制の治療戦略として、糖尿病や高血圧、脂質代謝異常を有する患者ではVFAを測定し、蓄積が認められればVFAの低下を目指した生活習慣の修正を行い、蓄積が認められなければリスク因子に対する個別介入を行うことが重要だと結論した。

 最後に同氏は、VFAが100cm2を超えた1260人を4年間にわたり追跡したデータを提示して、VFAが増加しなかった群では冠動脈疾患や脳卒中がほとんど発症しなかったことを紹介し、内臓脂肪にフォーカスした介入の重要性を強調した。

(日経メディカル別冊編集)