国際医療福祉大学の佐々木淳氏

 非高比重リポ蛋白コレステロール(non HDL-C)値は冠動脈疾患の予測因子として有用で、低比重リポ蛋白コレステロール(LDL-C)値を目標として脂質低下療法を行った際に残存するリスクを示す指標にもなることが、EPA(イコサペント酸エチル)製剤の冠動脈疾患発症予防効果を検討したJELIS試験のサブ解析から明らかになった。国際医療福祉大学の佐々木淳氏らが、7月15日から開催されている日本動脈硬化学会(JAS2011)で発表した。

 JELIS試験は、スタチンを服用している日本人高コレステロール血症患者における、EPA製剤の心血管イベントの1次・2次予防効果を検討した。1万8645例をEPA投与群(9326例)と非EPA投与群(9319例)の2群に分け、平均4.6年追跡した。その結果、EPA投与が主要冠動脈イベントの発症を対照に比べて19%、有意に低下させることが明らかになった(p=0.048)。

 近年、コレステロール低下療法ではLDL-C値だけでなく、総コレステロール値からHDL-C値を引いたnon HDL-C値もターゲットにすべきことが世界的にも提唱されている。日本動脈硬化学会の現行の動脈硬化性疾患予防ガイドライン2007年版にも、non HDL-Cの目標値がLDL-C値に次ぐ2次目標値に挙げられている。

 そこで本検討では同ガイドラインのコレステロール目標値を基準に、JELIS試験に登録された患者の治療1年後の目標値の達成率を、後ろ向きに解析した。

 LDL-Cとnon HDL-Cの両方の目標値を達成した患者をA群、LDL-C目標値は達成したがnon HDL-C目標値は達成できなかった患者をB群、non HDL-C目標値は達成したが、LDL-C目標値は達成できなかった患者をC群、2つの目標値のいずれも達成できなかった患者をD群に分類。EPA投与群と非投与群のそれぞれで、A群の主要冠動脈イベント発症率を基準とし、他の3群の主要冠動脈イベントの発症リスクを比較した。

 EPA非投与群では、LDL-C目標値を達成したがnon HDL-C値は達成できなかったB群のハザード比(HR)は2.30と、残存リスクは有意に高かった(p=0.0366)。non HDL-Cの目標値は達成したがLDL-C値は達成できなかったC群のハザード比は1.89と、やはり高い傾向を示したが、有意差はなかった。2つの目標値を達成できなかったD群のハザード比は2.43と、有意かつ最大だった(p=0.0001)。

 一方、EPA投与群においては、A群に対するHRはB群1.30、C群0.65、D群1.11となり、いずれも有意差はなかった。

 本検討ではさらに、LDL-Cとnon HDL-Cの一方または両方の目標値を達成できなかったEPA投与群3226例と非EPA投与群3366例を対象に、5年間の主要冠動脈イベントの累積発症率も比較した。その結果、EPA投与群は非EPA投与群に比べ、冠動脈イベントを38.0%、有意に抑制していた(HR:0.62[95%信頼区間:0.43−0.87]、p=0.0062)。

 以上の検討から佐々木氏は、「non HDL-C値は、主要冠動脈イベントの予測因子になりうる。また、LDL-C値が治療によって低下したとしても、non HDL-C高値が主要冠動脈イベント発症の残存因子となることも示唆された。ただ、LDL-C値とnon HDL-C値の一方あるいは両方の目標値を達成できなくても、EPA製剤は主要冠動脈イベントのリスク抑制に対し期待できる。特に、LDL-Cあるいはnon HDL-Cの低下療法に抵抗性を示す患者においては、EPA製剤は主要冠動脈イベント予防の有用な基礎薬となる可能性がある」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)