慶應義塾大学医学部老年内科の新井康通氏

 85歳以上の超高齢者では、若年層と比較して心血管疾患(CVD)の頻度が高いが、そのリスク因子とCVD発症や動脈硬化との関係については、あまり知られていない。7月16日まで札幌市で開催されていた日本動脈硬化学会(JAS2011)で慶應義塾大学医学部老年内科の新井康通氏らは、超高齢女性において血清シスタチンC値は、頸動脈プラークリスク増大と有意に関連していたと発表した。

 シスタチンCは生体内でシステインプロテアーゼインヒビターとして働く血清蛋白の1つで、糸球体濾過量(GFR)低下に伴い血中濃度が上昇する。食事や炎症、年齢、性差、筋肉量などの影響を受けないため、小児・老人・妊産婦などでも問題なく測定できる腎機能の指標と位置づけられている。

 本研究は、東京都在住の85歳以上の女性を住民基本台帳から無作為に抽出して行った住民調査で、249例を対象とした。平均年齢87.7±2.0歳、喫煙者3.2%で、19.7%に認知症が認められ、病歴は脳梗塞9.2%、心筋梗塞・狭心症10.8%、脂質異常が約3割、高血圧が約6割という集団だった。

 頸動脈エコー検査によって、58.6%が少なくとも1つの頸動脈プラークを有していることが明らかになった。また、対象を血清シスタチンCの濃度別に、低値群、中等値群、高値群の3群に分けて検討したところ、プラークがない領域で測定した頸動脈内膜中膜複合体肥厚度(IMT)との関連は認められなかった。

 一方、プラークありの頻度は3群でそれぞれ、45.9%、65.0%、65.5%、プラークスコアはそれぞれ0.0(0.0〜2.4)、1.6(0.0〜4.1)、1.7(0.0〜4.2)と、血清シスタチンC値が高いほど、頸動脈プラークリスクが増大していることが明らかになった。

 多変量解析で、年齢、喫煙、体重指数(BMI)、高血圧、糖尿病、CRPについて補正した後も、血清シスタチンC値は頸動脈プラークリスク増大と有意に関連していた(p=0.008)。慢性腎臓病(CKD)について補正したところ関連の程度は低下したが、CKD患者を除外して解析しても、シスタチンCと頸動脈プラークリスクとの関連が大きく変化することはなかった。

 これらの成績から新井氏は、「血清シスタチンC値は、高齢女性における頸動脈プラークリスク増加と有意に関連している」と結論づけた。今後は、血清シスタチンC値のリスク因子としての意義をさらに明らかにすべく、実際の心血管イベントや総死亡との関連性について、縦断調査を行っていきたいとしている。

(日経メディカル別冊編集)