新たに承認された薬剤の市販後臨床試験成績が報告されるまでの間、新薬を導入した医師が参考にできる情報は、治験のデータと自らの使用感だけとなる。最近、個々の医師がWEBにアップロードした治療成績をリアルタイムで集計し、解析するインターネットプログラムが登場。埼玉医科大学の鈴木洋通氏らは、このシステムを利用してまとめたロサルタン(LOS)/ヒドロクロロチアジド(HCTZ)合剤の成績について、カナダ・バンクーバーにて9月26日〜30日までから開催された第23回国際高血圧学会(ISH2010)で報告した。

 今回鈴木氏らが用いたのは、株式会社ケアネットが運営する医療情報サイト“CareNet”の会員向けのアンケート調査システムを活用して投薬による臨床データを集積するプログラム “Evidence STATION”。2006年12月に承認されたLOS/HCTZ合剤は、わが国初のARB/利尿薬合剤で、このシステムのテストケースとしてその処方動向と有効性が検討された。

 LOS/HCTZ合剤の調査には3401名の医師が参加。2006年12月から2009年12月までの3年間にLOS/HCTZ合剤による治療を受けた9万人以上の高血圧患者のデータが集積された。これらの患者のうち、今回の検討では、それまでにARBを含む降圧薬による治療を受けており、ARBをLOS/HCTZ合剤に切り替えた2万4835人の患者の6カ月間のデータが解析された。

 全2万4835人のうち男性比率は51.8%、年齢分布は65歳未満が39.0%、65〜74歳が29.9%、75歳以上が31.1%だった。また、40.1%の患者が脂質異常症、25.4%の患者が糖尿病を合併していた。

 LOS/HCTZ合剤への切り替え前に処方されていた降圧薬の数は、ARB単剤が49.0%、2剤併用が41.0%、3剤以上の併用が9.9%であった。

 6カ月時点の集計データを見ると、収縮期血圧(SBP)は切り替え前の156.0mmHgから134.5mmHgへ、拡張期血圧(DBP)が86.8mmHgから76.6mmHgへと低下した。また、脈圧(PP)も69.2mmHgから57.9mmHgへと低下した。

 切り替え前のSBPには年齢により若干の違いがみられたが(65歳未満:154.2mmHg、65〜74歳:155.9mmHg、75歳以上:158.4mmHg)、6カ月後のSBPはどの年代もほぼ同等の血圧値を示した(同134.3mmHg、134.2mmHg、135.0mmHg)。一方、DBPはすべての年代において10mmHgほど低下した。したがって、各年代間における切り替え前のDBPの血圧差は、そのまま6カ月後にも平行移動した形で認められた(65歳未満:91.4mmHg→80.1mmHg、65〜74歳:85.6mmHg→75.8mmHg、75歳以上:82.2mmHg→73.1mmHg)。この傾向は、男女間で差はなかった。

 この結果から、LOS/HCTZ合剤への切り替えは、年齢、性別を問わず良好な降圧をもたらし、特に75歳以上の高齢者ではSBPの低下が大きいことが示された。鈴木氏は、「こうした情報をリアルタイムでみることができるシステムは、新薬を導入する医師にとってきわめて有用だろう」とまとめた。

(日経メディカル別冊編集)