東北大学の目時弘仁氏

 ARB単剤で十分な降圧が得られない場合、ARBを増量すべきか、それとも他の降圧薬を追加すべきか?──。東北大学の目時弘仁氏らは、常用量のARB単剤治療からロサルタン/ヒドロクロロチアジド(LOS/HCTZ)合剤への切り替えを行う戦略とARBを最大用量まで増量する戦略の有効性を比較・検討するJ-HOME AI研究を行った結果、LOS/HCTZ合剤の方が降圧効果の「強さ」と「速さ」の双方の点で有効であったことを、バンクーバーにて9月26日から30日まで開催された第23回国際高血圧学会(ISH2010)で報告した。

 J-HOME AI研究は、常用量のARB単剤による4週間以上の治療によっても血圧コントロール不良(家庭血圧≧135mmHg)の本態性高血圧患者221人を登録。これらの患者を、LOS/HCTZ合剤群(n=110)または服用していたARBを最大用量まで増量する群(n=111)に無作為割付け、8週間治療した。8週間の治療を完遂した患者は、LOS/HCTZ合剤群が106人(95%)、最大用量ARB群が106人(96%)であった。

本研究の特徴は、外来血圧ではなく、家庭血圧と中心血圧、Augmentation Index(AI)の変化をエンドポイントとしていることである。今回の目時氏らの発表では、このうち家庭血圧に関する解析結果が報告された。

8週後時点の朝の家庭血圧については、LOS/HCTZ合剤群では登録時の収縮期血圧153mmHgに比べて12.8mHg、登録時の拡張期血圧88mmHgに比べて5.8mmHg低下した。一方、最大用量ARB群における低下量はSBP 7.6mmHg、DBP 3.8mmHgで、両群間における降圧度の差は、SBPで5.2mHg、DBP2.0mgと、LOS/HCTZ合剤群の方が有意に血圧低下量が大きかった(SBP:p=0.003、DBP:p=0.03)。同様に、夜の家庭血圧の低下量はLOS/HCTZ群ではSBP 11.8mmHg、DBP 5.2mmHgであったのに対し、高用量ARB群ではSBP 6.1mmHg、DBP 2.7mmHgだった。

 目時氏らは、両群間の降圧効果発現の速さと降圧効果の大きさ、降圧効果が安定するまでの時間の詳細な検討を試みた。まず、登録時から8週後までの家庭血圧の推移を線形混合モデルによって解析。次に、降圧効果(Δ)は最大降圧効果(A)と登録時からの日数(t)、降圧効果が安定するまでの時間(stabilizing time;3.0/k)からなる指数関数(Δ=Ae-kt)に従うと仮定した非線形混合モデルにより、最大降圧効果と降圧効果が安定するまでの期間を評価した。

 その結果、LOS/HCTZ合剤群の血圧は、切り替え2日後より有意な差をもって最大用量ARB群を下回り、切り替えによる「付加的な降圧効果」は全期間を通じて維持されていたことが確認された。両群の最大降圧効果は、LOS/HCTZ合剤群がSBP 10.9mmHg、DBP 5.0mmHg、最大用量ARB群がSBP 7.9mmHg、DBP 2.6mmHgと算出された。

 また、降圧効果が安定するまでの期間を算出したところ、最大用量ARB群ではSBPが122.3日、DBPが42.7日に対し、LOS/HCTZ合剤群ではSBPが7.3日、DBPが29.7日であった。

 こうした結果から、LOS/HCTZ合剤は最大用量ARBに比べて、家庭血圧においてより大きな降圧効果が得られるとともに、より短期間で降圧効果が安定することが明らかとなった。目時氏らは、「常用量のARB単剤でコントロール不良な高血圧患者に対しては、ARBを増量するよりLOS/HCTZ合剤への切り替えを行うほうがより効果的だ」と結論した。

(日経メディカル別冊編集)