福岡大学筑紫病院の松本研三氏

 ARBと利尿薬の合剤が導入されてから約5年が経過したが、長期的な有効性と安全性の評価はまだ定まっていない。福岡大学筑紫病院の松本研三氏らは、ロサルタン(LOS)/ヒドロクロロチアジド(HCTZ)合剤を処方された患者を1年間にわたって追跡した観察研究CHAT-Pにおいて、LOS/HCTZ合剤への切り替えは概ね安全で、降圧不十分な患者に対する有効な治療法であることが示されたと発表した。バンクーバーで9月26日〜30日に開催された第23回国際高血圧学会(ISH2010)で報告した。

 CHAT-P(Chikushi Anti-Hypertension Trial - Preminent)研究は、福岡県筑紫野地区の110名の実地医家が参加した多施設共同観察研究。対象は、ARBベースのレジメンによる治療(登録時に利尿薬を併用していた症例は除外)を1カ月以上継続しているにもかかわらず日本の高血圧治療ガイドラインの降圧目標値を達成できていない本態性高血圧患者632人。平均年齢は67歳で、男性が51%、141人(22%)が糖尿病を、228人(36%)が脂質異常症を合併し、172人(27%)が糸球体濾過量(GFR)が60mL/min/1.73m2未満のCKDだった。

 切り替え前のARBの内訳は、バルサルタンが34%、カンデサルタンが20%、ロサルタンが18%、テルミサルタンが16%、オルメサルタンが11%だった。本検討では、すべての症例をLOS/HCTZ合剤に変更して追跡した。ARB以外の併用薬として、Ca拮抗薬が47%、ACE阻害薬が3%、α遮断薬が5%、β遮断薬が13%の患者で用いられていたが、それらはそのまま継続された。

 全632人のうち、1年間の追跡を完遂した患者は478人(76%)。登録時に157/87mmHgであった血圧は、切り替えからわずか1カ月で収縮期血圧(SBP)が約20mmHg低下、拡張期血圧(DBP)が約10mmHg低下し、12カ月後には136/78mmHgへと低下した。

 合併症患者の降圧の程度は、CKD合併例とCKD非合併例では同等で、登録時にはともに155mmHg以上あった収縮期血圧が12カ月後にはともに約135mmHgまで低下していた。糖尿病合併例では、非糖尿病合併例に比して降圧の程度が低く、非糖尿病合併例では134mmHg程度まで低下していたが、糖尿病合併例は138mmHg程度と試験期間を通じてSBPには約4mmHgの差が認められた。多変量解析の結果、糖尿病合併は有意な治療抵抗性の規定因子であることが示され、糖尿病合併例の降圧治療の難しさが改めて示される形となった。

 血清脂質やHbA1c値、血清尿酸値、Na値などの代謝パラメータは、多くの患者で不変であった。いくつかのパラメータでは増加も認められたが、正常値の範囲内での変化だった。

 こうした結果から、LOS/HCTZ合剤は概ね安全であり、ARBベースの降圧薬治療で十分な降圧が得られない場合、LOS/HCTZ合剤は有効な選択肢であると考えられた。

(日経メディカル別冊編集)