横浜市立大学の岡野泰子氏

 ARBと利尿薬の合剤は、異なる機序の相乗効果による降圧効果の増強と相互補完による副作用の低減が期待できる組み合わせだ。そこで、就寝中の最低血圧(base BP)と自律神経機能への影響という観点から、ロサルタン(LOS)/ヒドロクロロチアジド(HCTZ)合剤の効果を検討し、同合剤がbase BPの低下と交感神経活性の亢進抑制を介してQOLの改善をもたらすことを、横浜市立大学の岡野泰子氏らがバンクーバーで9月26日〜30日まで開催された第23回国際高血圧学会(ISH2010)で報告した。

 今回の検討に先立ち岡野氏らは、健康成人ボランティア135人の24時間血圧(ABP)と心電図データの解析から、交感神経活性の指標であるLF/HF値(心拍数変動の波長分布)とbase BP、特に夜間のLF/HF値とbase BPの間に高い相関がみられ、これらの値が健康関連QOL(HRQOL)に影響を及ぼすことを明らかにしている(J Hum Hypertens 2007;21)。

 また、CKD合併高血圧患者において、夜間血圧が十分低下しないnon-dipperは、CKDの進行をさらに促進するリスク因子であることが明らかにされている(Timio et al. Clin Nephrol 1995;43)。

 そこで今回岡野氏らは、CKDを伴う高血圧患者を対象に、LOS/HCTZ合剤による治療が患者のbase BPとLF/HF値、HRQOLに及ぼす影響を検討した。

 対象は、ARBによる治療を1カ月以上継続しているCKD合併高血圧患者10人(平均年齢67.6歳、男女比3:7)。CKDの基礎病態は糖尿病性腎症が8人、腎硬化症が1人、不明が1人、すべての患者でCKDステージが2−3であった。

 岡野氏らは、これらの患者に投与されていたARBを中止してLOS /HCTZ合剤に切り替え、3カ月間の治療を行った。その結果、就寝中の収縮期血圧の最低値(base SBP)は、切り替え前の114mmHgから100mmHgへと有意に低下した(p<0.05)。また、24時間平均SBP、日中の平均SBP、夜間の平均SBPについても有意な低下が認められた(すべてp<0.05)。

 心拍数については、24時間平均、日中平均、夜間平均いずれにおいても変化は認められなかったが、24時間平均LF/HF値は1.48から0.94へと有意に低下し、夜間平均LF/HF値にも有意な低下が認められた(ともにp<0.05)。

 さらに、HRQOLを評価するSF-36スコアの8つの下位尺度のうち、身体の日常役割機能スコア(過去1カ月間に仕事や日常活動をした時に身体的な理由で問題があったかどうか)に有意な改善が認められた(p<0.05)。

 以上の結果より、CKDを伴う高血圧患者に対するARBからLOS /HCTZ合剤への切り替えは、24時間安定した降圧効果をもたらすのみならず、base BPの低下と交感神経活性の抑制を介して患者のQOLを改善することが示された。

 なお、base BPには塩分摂取との相関がみられることが示されている(Tochikubo et al. Hypertension 1996;27)ことから、切り替えによるbase BP低下の機序には少量のHCTZが加わったことによるNa排泄量の増加が関連している可能性が推測されたが、今回の検討ではNa排泄量の変化は有意なものとして認められなかったことから、降圧増強機序の解明は今後の課題とした。

(日経メディカル別冊編集)