東京女子医科大学糖尿病センターの酒井敬子氏

 糖尿病は、肥満や高血圧とともに、左室肥大のリスク因子の1つだ。この20年ほどの間に新規の降圧薬や糖尿病治療薬が登場し治療方針も変化してきており、若年の糖尿病患者における左室肥大のリスク因子は変わっている可能性がある。そこで東京女子医科大学糖尿病センターの酒井敬子氏らは、1990年前後および2000年以降における患者を対象に、左室肥大のリスク因子に変化がないかを検討した結果を、バンクーバーで開催された第23回国際高血圧学会(ISH2010)で報告した。

 今回の対象は心エコー検査を実施した40歳以下の2型糖尿病患者で、慢性腎不全や心筋梗塞を有する症例は除外した。1988〜95年(E群)は38人(男性24人、平均年齢34歳)、2000〜07年(L群)は68人(男性50人、平均年齢34歳)、計106人を対象に12年間で左室肥大のリスク因子に変化がないかを検討した。

 両群の患者背景を見ると、BMIはE群が22.0kg/m2、L群が28.5 kg/m2であり、肥満(BMI≧25 kg/m2)もそれぞれ26%、81%と、ともに有意差が認められた(いずれもp<0.001)。飲酒者の割合はそれぞれ51%、29%であり、E群の方が有意に高かった(p<0.05)。一方、年齢、性、糖尿病罹病期間、収縮期血圧、拡張期血圧、喫煙率、網膜症、蛋白尿、血清クレアチニンについては、両群に差はなかった。

 心エコー所見で群間差が認められたのは左室後壁厚(PWTd)のみで、左室拡張末期径(LVDd)、左室収縮末期径(LVDs)、相対左室壁厚(RWT)、左室心筋重量指数(LVMIとLVM2.7)、左室内径短縮率(FS)では群間差は認められなかった(LVM2.7=左室心筋重量/身長2.7)。

 多変量回帰分析の結果、E群ではBMI、平均血圧と、L群ではBMIと、独立して左室心筋重量指数と相関していた。つまり、BMIは依然として左室肥大のリスク因子であることが示された。

 これらの結果から、40歳以下の日本人2型糖尿病患者においては、12年間でBMIは有意に増加したこと、左室心筋重量指数は変化していないこと、平均血圧は左室肥大のリスク因子から外れたことが明らかになった。酒井氏はその理由として、新たな治療薬の開発や治療法の進歩により、血圧が厳格にコントロールできるようになったことと、細小血管合併症の発症が予防できるようになったことを挙げた。

(日経メディカル別冊編集)