アイルランド・コノリー病院のElizabeth L. Callaly氏

 夜間血圧の上昇が随時血圧の上昇よりもはるかに強力な心血管死の予測因子であるとの報告は数多い。しかし、夜間血圧の降下度合(dipping status)と生命予後との関連については相反する報告もあり、コンセンサスが得られていない。アイルランド・コノリー病院のElizabeth L. Callaly氏らは、同国の民間企業が運営するデータベースを利用し、1万人以上の高血圧患者の24時間血圧モニタリング(ABPM)による血圧の日内変動パターンと脳卒中死亡の関連を検討した。その結果、non-dipperが脳卒中死亡の独立したリスク因子であることが明らかになったことを、バンクーバーにて9月26日〜30日まで開催された第23回国際高血圧学会(ISH2010)にて報告した。

 Callaly氏らが解析に利用したのは、ABPMを含む種々の臨床データをオンラインで管理・解析するdabl社のデータベース。同データベースには、過去23年分、1万4000例以上の高血圧患者の臨床データが集積されている。同氏らは、このデータベースから、初診時のABPMデータと背景因子のデータが揃った1万1291例のデータを抽出し、解析に供した。

 平均追跡期間は5.3年で、その間に948例の患者が死亡し、うち566例が心血管疾患(CVD)による死亡例だった。現在も生存している患者群(生存群;n=1万0353)とCVDによって死亡した患者群(CV死亡群;n=566)の背景因子を比較すると、年齢(52歳 vs 68歳)、女性比率(55% vs 44%)、喫煙率(23% vs 31%)、糖尿病合併率(4.9% vs 7.7%)、総コレステロール値(5.8mmol/L vs 6.2mmol/L)、CVD既往者の割合(9% vs 23%)、外来SBP(161.1mmHg vs 173.7mmHg)、日中SBP(145.4mmhg vs 153.1mmHg)、夜間DBP(74.8mmHg vs 78.8mmHg)、そして夜間SBP(127.2mmHg vs 142.4mmHg)に有意な差が認められた。

 他の交絡因子について補正したうえで、夜間の収縮期血圧の降下度がCVDによる死亡リスク上昇に果たすハザード比(HR)を求めると、すべてのCVDによる死亡に対するHRは1.13(95%信頼区間:1.08-1.17)、心疾患死亡(n=358)に対するHRは1.09(1.03-1.14)、そして脳卒中死亡(n=151)に対するHRは1.18(1.10-1.27)であった。すなわち、夜間の収縮期血圧の降下度は、たしかに脳卒中死亡のリスク因子であることが確認された。

 次にCallaly氏らは、全1万1291例の患者を夜間血圧のdipping statusに基づき、normal dipper(夜間SBP低下率10〜20%;n=5091)、extreme dipper(夜間SBP低下率≧20%;n=2086)、non-dipper(夜間SBP低下率≦10%;n=3187)、reverse dipper(夜間SBPが上昇;n=927)の4群に分類し、normal dipper群の脳卒中死亡率に対する他の3群の相対HRを求めた。

 その結果、extreme dipperのHRは1.09(95%信頼区間:0.61-1.92)となり、脳卒中による死亡との有意な相関は認められなかった。これに対し、non-dipperのHRは1.72(1.13-2.63)、reverse dipperのHRは2.97(1.85-4.76)となり、いずれも脳卒中による死亡と有意な相関を呈した。

 すなわち、夜間の過度な血圧低下は脳卒中死亡リスクを上昇させないが、夜間血圧が低下しない傾向があるnon-dipperは、脳卒中による死亡リスクを1.7倍以上高めることが明らかとなった。Callaly氏は、今回の知見に基づき、「今後はdippingパターンの回復を図るために最適な降圧剤のレジメンといった、24時間の血圧を視野に入れた治療計画が、脳卒中をはじめとする予後を改善する可能性がある」と語った。


(日経メディカル別冊編集)