済生会中央病院の栗山哲氏

 ARBと少量利尿薬の併用は、2つの機序の相乗効果と相互補完による降圧効果の増強、副作用の低減が期待できるレジメンだ。さらに、両者を組み合わせた合剤はアドヒアランスの向上が期待できるというメリットもある。済生会中央病院の栗山哲氏らは、他の降圧薬からロサルタン(LOS)/ヒドロクロロチアジド(HCTZ)合剤に切り替えた高血圧患者の血圧および生化学データの変化を追跡した結果、切り替えは血圧のさらなる低下をもたらすとともに、BNPや尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)の有意な改善も得られることをを、バンクーバーで開催された第23回国際高血圧学会(ISH2010)で報告した。

 本検討は、外来において降圧薬を投与中で、降圧目標値(収縮期血圧[SBP]130mmHg未満、かつ拡張期血圧[DBP]80mmHg未満)を達成できないため、LOS 50mg/HCTZ 12.5mg合剤1剤への切り替えを行った高血圧患者208人に対する前向きオープンラベル観察試験。

 登録時の患者の平均年齢は60.6歳、男性146人、女性59人、登録時の外来血圧はSBP 144.2mmHg、 DBP 87.2mmHgであった。また、CKDステージ2、3、4の患者の割合は、それぞれ50%(105人)、29%(61人)、4%(8人)であった。45%(93人)の患者が、2剤以上の降圧薬を服用していた。

 切り替えのパターンは、ARB単剤からLOS/HCTZ合剤への切り替えが47%(97人)、Ca拮抗薬(CCB)単剤からの切り替えが18%(37人)、ARBとCCBの併用からの切り替えが16%(33人)、就寝前のα遮断薬併用などその他のパターンが20%(41人)であった。

 栗山氏らは、これらの患者を切り替えから6カ月間にわたって追跡し、登録時および切り替えから1、3、6カ月後の外来血圧と家庭血圧の変化、血清尿酸値、微量アルブミン尿、BNPなどの生化学的検査値の変化を評価した。なお、切り替え3カ月後に降圧不十分であった患者に対しては、担当医の判断により適宜、他の降圧薬を追加することが許された。

 6カ月の追跡の結果、外来血圧は、SBP 144.2mmHg→133.8mHg、DBP 87.2mmHg→80.4mmHgと有意に低下した(ともにp<0.001)。切り替え前の降圧薬ごとにSBPの推移を見ると、ARB単剤からLOS/HCTZ合剤への切り替えで10.3mmHg低下、CCB単剤からの切り替えで12.1mmHg低下(ともにp<0.001)していた。また、ARB/CCBの併用からLOS/HCTZ合剤への切り替えでは8.6mmHg低下(p<0.01)、ARB/CCBの併用からLOS/HCTZ合剤とCCBの併用に切り替えた場合では、8.3mmHg低下していた(ともにp<0.01)。切り替え前の投薬状況にかかわらず、LOS/HCTZ合剤への切り替えは有意に血圧を下げることが明らかになった。

 また、家庭血圧(SBP/DBP)も朝が144.0/87.2mHgから129.2/79.4mmHgへ、夜が136.1/86.3mmHgから123.5/77.8mmHgへと有意に低下した(朝のSBP/DBP:p<0.001、夜のDBP:p<0.01、夜のSBP:p<0.05)。

 さらに、BNPは18.4pg/dLから14.9pg/dLへ、UACRは21.1mg/g・Crから12.9mg/g・Crへと有意に改善した(ともにp<0.001)。なお、BNPとUACRの低下は3カ月時点のSBPが10mmHg以上下がった患者群(Responder)においてより顕著だった。

 一方、血清尿酸値(SUA)には有意な増加(p<0.05)がみられたが正常範囲内での変動(5.9mg/dL→6.1mg/dL)であった。ベースライン時に高尿酸血症を合併していた患者(SUAが7mg/dL以上の48人)に限れば、逆に有意な低下(7.9mg/dL→7.6mg/dL、p<0.05)が認められた。

 以上の結果より、他の降圧薬からLOS/HCTZ合剤への切り替えは、さらなる血圧の低下をもたらすとともに、BNPやUACRを改善し、さらに高尿酸血症合併患者については血清尿酸値の改善をもたらすことが示された。栗山氏は、「LOS/HCTZ合剤のこうした作用は心血管保護や腎保護の面でも大きな強みとなるのではないか」と指摘した。

(日経メディカル別冊編集)