札幌医科大学第二内科の赤坂憲氏

 インクレチンは腸管から分泌されるホルモンの総称で、糖尿病の発症機序にも関与し、現在では糖尿病の治療標的となっている。現在のところ、一般住民における血圧値とGLP-1値との関連性は明らかにされていない。そこで札幌医科大学第二内科の赤坂憲氏らは、端野・壮瞥町研究の一環として、インクレチン値と血圧値の関連性を検討し、その結果をバンクーバーで開催された第23回国際高血圧学会(ISH)のポスターセッションで報告した。

 今回の研究の目的は、一般住民において、インクレチンのうちグルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)値と血圧値との関連性を検討することだ。

 対象は、2009年の夏に北海道壮瞥町で総合健診を受けた住民から募集し、同意の得られた38人(男性20人、女性18人)。種類を問わず何らかの治療薬を服用している患者は除外した。対象者には早朝に75gグルコース負荷試験(OGTT)を実施し、グルコース負荷前、負荷60および120分後に採血して血漿中のグルコース値、インスリン(IRI)値、GLP-1値を測定した。75gOGTT 0分から60分後までのGLP-1およびはインスリン値の変化量(値)、0分から120分後までの曲線下面積(AUC値)を求め、収縮期血圧を含めて関連性を検討した。

 登録時の背景を男女間で比較すると、女性では男性に比べて収縮期、拡張期血圧は有意に低く(男性149/84mmHg、女性131/73mmHg)、空腹時GLP-1値は有意に高かった(男性2.8pmoL/L、女性4.0pmoL/L)。しかし、年齢(約60歳)、BMI(約24.7)、血清脂質値(総コレステロール値217mg/dL、中性脂肪値111mg/dL、HDL-C値60mg/dL、いずれも男性値)、HbA1c値(5.2%、男性値)、空腹時血糖値(97mg/dL、男性値)、空腹時IRI値(5.9pU/mL、男性値)には男女間に有意な違いは認められなかった。

 75gOGTT後には血糖値、IRI値とともにGLP-1値も上昇した。GLP-1値とIRI値との関連性を検討したところ、GLP-1値とIRI値、GLP-1のAUC値とIRIのAUC値には有意かつ正の相関が認められた。

 また、GLP-1値と収縮期血圧値との関連性を検討したところ、GLP-1値およびGLP-1のAUC値と収縮期血圧値には有意かつ負の相関が認められ、多変量回帰分析を行って年齢、性別、BMIで補正しても、この有意な関連性は消失しなかった。

 赤坂氏によると、GLP-1と血圧の関連性については、ヒトではGLP-1は飲水行動を抑制してナトリウム利尿を促進すること、2型糖尿病患者ではGLP-1はeNOS活性化を介して内皮依存性の血管拡張反応を改善すること、GLP-1アナログ製剤の臨床試験では同アナログの投与により体重減少と血圧低下が認められたことなどが報告されている。

 今回の一般住民を対象とした横断的研究から、収縮期血圧が高いほどGLP-1値は低くなることが明らかとなった。赤坂氏は、血圧値とインクレチンの関連性について、今後さらに検討を進める必要があると述べて講演を締めくくった。

(日経メディカル別冊編集)