米Mayo Clinic内科のMarysia Tweet氏

 近年、効果的な降圧治療が幅広く利用できるようになったにもかかわらず、60歳超の高血圧患者の20%しか降圧目標である140/90mmHg未満を達成していない。そこで米Mayo Clinic内科のMarysia Tweet氏らは、地域住民に対する治療方針を検討し、その結果を9月26日からバンクーバーで開催されている第23回国際高血圧学会(ISH2010)で報告した。

 同氏らは、過去に実施された米国の大規模試験Hypertension Detection and Follow-up ProgramHDFP)のデータセットを、現在の血圧分類JNC-7を用いてレトロスペクティブに解析することで、段階的治療(stepped care)と通常治療(referred care)の効果を再検討した。

 HDFPは1971〜83年に全米で実施された多施設共同試験で、30〜69歳の高血圧患者1万940人を段階的治療群(5413人)あるいは通常治療群(5193人)に無作為に割り付け、5年間にわたり追跡した。段階的治療群では低用量の降圧薬から治療を開始し、降圧目標に到達するまで段階的に降圧治療を強化した。一方、通常治療群では、患者は通常の医療サービスを利用しながら降圧治療を継続した。その結果、段階的治療群は通常治療群に比べ、5年後の血圧コントロールが有意に良好であり、死亡率や疾患罹病率も有意に低いことが明らかになった。

 しかし、HDFPが実施されたのは、収縮期血圧を用いて血圧を管理することの重要性が明らかになる前であり、その当時、高血圧は拡張期血圧によって判定されていた。そこで今回の解析では、HDFPデータセットに現在の高血圧の判定基準JNC-7を適用しても、段階的治療による血圧コンロトールは標準治療より良好であるという仮説を立て、その検証を試みた。

 評価項目として、5年後のJNC-7分類による降圧目標達成率(140/90mmHg未満、糖尿病合併例は130/80mmHg未満)、うっ血性心不全・狭心症・心筋梗塞・虚血性および高血圧性心疾患の複合イベント(複合心血管イベント)、脳卒中・心血管疾患・末梢血管疾患の複合イベント(複合脳血管イベント)の発症率などを設定。5年後の追跡データが得られたのは、段階的治療群が4786人、通常治療群が4227人であった。登録時の背景を比較すると、段階的治療群で収縮期血圧値が1.4mmHgだけ有意に高かったが、他の背景因子では特に有意差は認められなかった。

 解析の結果、5年後の降圧目標達成率は段階的治療群が66%、標準治療群が44%と、前者が有意に良好だった(p<0.0001)。また、心血管複合イベントの発症率は段階的治療群が29.7%、標準治療群が33.6%、脳血管複合イベントの発症率はそれぞれ31.2%、35.6%と、いずれも前者で有意に低かった(いずれもp<0.0001)。

 今回の検討で、段階的治療による血圧コントロールは、現在のJNC-7の血圧分類を適用しても、標準治療に比べ優れていることが明らかになった。こうした結果に基づきTweet氏は、「地域住民の血圧コントロール状況を改善するためには、低用量の降圧薬から開始して段階的に治療を強化するプロトコルを採用すべきである」と指摘した。

(日経メディカル別冊編集)