東北大学の伊藤貞嘉氏

 血清尿酸値(SUA)の上昇と慢性腎障害(CKD)は、どちらも独立した心血管イベント(CVE)のリスク因子として知られているが、両者の関係を検討した報告は少ない。東北大学の伊藤貞嘉氏らは、ARBロサルタンをベースとしたレジメンで治療中の高血圧患者を対象とした大規模観察研究J-HEALTHのサブ解析を行った結果、SUAの上昇は腎機能低下と有意に相関するだけでなく、CKD合併例におけるSUAの上昇はCVE発生リスクを2倍以上に高めることを明らかにした。カナダ・バンクーバーにて9月26日から開催されている第23回国際高血圧学会(ISH2010)で報告した。

 J-HEALTH研究は、日常の臨床現場でロサルタン(25〜50mg/日、必要に応じて100mgまで増量)をベースとした治療を受けている高血圧患者を登録した大規模前向き観察研究で、登録患者数は3万1048例、追跡期間は最大5年。今回伊藤氏らは、このコホートから2回以上の血清クレアチニン(Cr)値の測定記録がある患者7629例を抽出、患者をCKD合併群(eGFR<60mL/min/1.73m2;n=3733)と非CKD群(n=3896)に分けたうえで、両群におけるSUA変化と腎機能、CVE発生率の解析を行った。

 試験登録時の患者背景は、CKD群の平均eGFRが49.5mL/min/1.73m2、非CKD群では74.7mL/min/1.73m2だった。平均年齢は、CKD群で67.3歳、非CKD群では60.3歳、また男女比は、CKD群は男性36%、非CKD群は51%であった。収縮期血圧(SBP)は両群に差はなかったが、拡張期血圧(DBP)は、CKD群92.5mmHgに対し、非CKD群は94.9mmHgだった。BMI(23.9kg/m2 vs 24.2kg/m2)、飲酒率(35.0% vs 48.5%)、喫煙率(24.7% vs 32.7%)、脳血管障害合併率(5.9% vs 3.5%)、心血管疾患合併率(11.1% vs 7.8%)などに有意差がみられた(いずれもp<0.001)。

 平均3.1年間の治療の結果、血圧は両群とも有意に低下した(p<0.001)。また、eGFRはCKD群が49.5mL/min/1.73m2から65.8mL/min/1.73m2へ(p<0.001)、非CKD群が74.7mL/min/1.73m2から80.7mL/min/1.73m2へ(p<0.001)といずれも有意に上昇しており、欧米での臨床試験と同様に、RA系阻害薬であるロサルタン投与によって腎機能が改善することが日本人でも確認された。

 eGFRの変化と相関する因子を多変量回帰分析によって検討すると、年齢や血圧、尿蛋白といったすでに明らかにされている腎機能低下のリスク因子に加え、追跡期間中のSUA、1年間のSUA変化、およびeGFR変化との間にも負の相関が認められた。つまり、ロサルタンベースの治療によって患者のSUA値が改善すると腎機能の改善も期待できるという結果となった。

 また、追跡期間中のCVEの発生率は、非CKD群の1.4%(54人)に対し、CKD群では2.3%(87人)と有意に高率で(p<0.05)、非CKD群に対してCKD群は2倍以上相対リスクが高いことが確認された。

 さらに、CKD群のなかでもSUA<7mg/dLの患者のCVE発生率は1.9%であったのに対し、SUA≧7mg/dLの高尿酸血症合併例のCVE発生率は4.3%ときわめて高率で、高尿酸血症を合併するCKD患者は高尿酸血症を合併していないCKD患者に比べて2.3倍心血管疾患の発症リスクが高いことが確認された(相対リスク 2.30[95%信頼区間:1.22-4.33]、p=0.01 vs 非高尿酸血症群)。

 これまでCKD、高尿酸血症はそれぞれ独立した心血管疾患の危険因子であることが知られていたが、今回の結果から、腎機能低下例(CKD)に高尿酸血症を合併するとさらに心血管疾患の発症リスクが高まることが示された。また、早期からSUAを低下させることで腎機能低下を改善することができ、その結果、心血管疾患発症抑制効果も期待できることから、高血圧治療において、腎機能の改善やSUA抑制に留意することの重要性が示された。

 伊藤氏は、「SUA低下作用をもつロサルタンベースの降圧療法は、CKDを伴う高血圧患者のCVE予防のための有用な選択肢だと考えられる」と締めくくった。

(日経メディカル別冊編集)