重度の下肢虚血を有する末梢動脈疾患PAD)患者に対する経皮的経管的血管形成術PTA)は、血流動態の改善に伴って心負荷を軽減することが明らかとなった。9月26日からバンクーバーで開催中の第23回国際高血圧学会(ISH2010)で、自治医科大学循環器内科の江口和男氏が報告した。

 PAD患者の5年死亡率は15〜30%と高く、死因の約75%は心血管系障害によるものだ。また、動脈硬化の指標である足関節上腕血圧比(ABI)低値、心負荷の指標である左室肥大は、心血管イベント発症の強い予測因子であることが分かっている。

 PAD患者では重度の下肢虚血例に対してPTAが実施されるが、PTAによる血流改善後に心血管系疾患に関する予後改善効果が得られるという報告はない。そこで江口氏らは、PAD患者に対するPTA施行の心保護効果を評価した。

 今回、PTA実施が予定されたPAD患者連続76例を前向き観察研究として登録。このうち解析対象はPTA実施前後の心エコー所見が得られた56例で、平均年齢は69歳、男性が82%を占めた。合併症の保有率は高血圧が73%、脂質異常症が35%、糖尿病が42%、腎機能障害が46%で、透析例が33%だった。また、心血管疾患合併症として狭心症あるいは心筋梗塞が21%、脳血管障害が25%に、うっ血性心不全が8%に認められた。血圧値は149/74mmHg、心拍数は76/分だった。

 評価項目は、血圧、心拍数、ABI、頸動脈肥厚指数(AI)、左室心筋重量指数(LVMI)、などで、評価はPTA実施前、実施直後、2〜3ヵ月後の3点で行った。

 PTA実施直後に、上腕血圧は149mmHgから129mmHgに、中心動脈圧は133mmHgから121mmHgにそれぞれ有意に低下したが、心拍数には有意な変動は認められなかった。ABIはPTA実施直後に有意に増加し、2〜3ヵ月後にはさらに増加傾向となった。AI(駆出圧と反射圧の比)はPTA実施直後に有意に低下して2〜3カ月後は横ばいだった。脈波速度(PWV)にはPTA実施前後で有意な変動は認められなかった。

 心エコー所見では、PTA実施後に心室中隔厚(IVSd)、後壁厚(PWd)、LVMI、E波(拡張早期波)が有意に改善した。

 以上の結果から江口氏は、PAD患者ではPTAを実施することで心血管負荷が軽減され、その結果として心血管保護効果が得られる可能性があると締めくくった。

(日経メディカル別冊編集)