米国アラバマ大学のSuzanne Oparil氏

 Ca拮抗薬(CCB)やACE阻害薬などの新しい降圧薬より、利尿薬のほうが心血管疾患抑制効果に優れるとしたALLHAT試験の結果は、新しい降圧薬を多用する世界各国の医師に大きな驚きをもって迎えられた。このALLHAT試験登録患者の追跡結果が報告され、利尿薬の有効性は今もなお持続していることが明らかとなった。米国アラバマ大学のSuzanne Oparil氏が、バンクーバーで9月26日から開催されている第23回国際高血圧学会(ISH2010)で報告した。

 ALLHAT試験は、3万3357例の心血管疾患(CVD)のリスク因子をもつ高血圧患者に対し、1994〜2002年に実施された多施設共同無作為化二重盲検試験。4〜8年の追跡の結果、利尿薬(クロルタリドン:本邦未発売)ベースの治療群(n=15255)に比べ、CCB(アムロジピン)ベースの治療群(n=9048)では心不全の発症率が有意に高く(相対リスク1.38)、ACE阻害薬(リシノプリル)ベースの治療群(n=9054)では脳卒中と複合心血管疾患(複合CVD)、心不全の発症率が有意に高かった(脳卒中:相対リスク1.15、複合CVD:相対リスク1.10、心不全:相対リスク1.20)。

 今回Oparil氏らは、試験で行われた治療が、試験終了後の患者の生存率と有病率に与えている影響を評価するために、該当する患者の2002年以降の医療記録データを総覧・抽出し、その解析を行った(総追跡期間は8〜13年)。ただし、カナダの患者についてはすべてのデータの追跡ができなかったため除外した。また、退役軍人ならびに医療保険または社会保険番号のない患者については、疾病罹患状況の追跡ができなかった。その結果、生存率はカナダの患者を除く3万2804例、死亡を含むイベント発生率はカナダの患者と退役軍人、医療保険・社会保険非加入者を除く2万1623例を対象とする解析となった。

 その結果、一次エンドポイントであるCVD死亡率については、試験期間中からその後の追跡期間を通じて3群とも同等であった。しかし、脳卒中による死亡については、利尿薬群とCa拮抗薬群は同等だったが、利尿薬群に比べてACE阻害薬群は有意に死亡率が高かった(相対リスク:1.20 vs 利尿薬群、p=0.03)。また、試験期間中にCa拮抗薬群で相対リスクが38%高かった心不全による入院もしくは致死性心不全の発症率についても、その差は縮小したものの、利尿薬群に比べてCa拮抗薬群は発症率が高かった(相対リスク:1.12、p=0.01)。

 以上のように、試験期間中に認められた利尿薬群の優位性は、試験終了後、担当医の裁量に任された降圧治療のもとで縮小し、複合CVD全体の発現率は同等だったが、試験期間、試験終了後の追跡期間における心不全発症率はCa拮抗薬群、脳卒中による死亡率はACE阻害薬群が、利尿薬群に比して有意に高率であった。

 Oparil氏は、「これらの結果を総合すると、Ca拮抗薬ベース、あるいはACE阻害薬ベースの治療は、利尿薬ベースの治療よりも優れているとはいえない。利尿薬ベースの治療は少なくとも1つ以上のCVDイベント抑制において他の2つの治療よりも優れている」と結論し、「多様な治療選択肢がある現在においても、高血圧のファーストラインには利尿薬を用いることが原則であり、また、そのベネフィットを持続させるためにも使用を継続するべきだ」と述べた。


(日経メディカル別冊編集)