名古屋市立大学大学院心臓・腎高血圧内科学の土肥靖明氏

 血圧は通常、上腕において測定し、その値は心血管疾患の罹患率や死亡率の強力な予測因子だ。しかし、治療中の高血圧患者において、中心大動脈圧上腕血圧よりも心血管イベントと密接に関連している可能性が報告されている。そこで、名古屋市立大学大学院心臓・腎高血圧内科学の土肥靖明氏(写真)らは、一般集団の中心大動脈圧について検討し、中心大動脈圧は高血圧による臓器障害の予測因子であることを、9月26日からバンクーバーで開催されている第23回国際高血圧学会(ISH2010)で報告した。

 一般に、上腕血圧は心血管イベントの優れた予測因子と考えられているが、ASCOT-BPLA(Anglo-Scandinavian Cardiac Outcomes Trial-Blood Pressure Lowering Arm)試験のサブ解析において、アムロジピンベース群とアテノロールベース群で上腕血圧が同等であっても、中心大動脈圧は前者で有意に低いことが報告され、それが両群の予後に影響した可能性が指摘されている。それらを踏まえ土肥氏らは、遠州病院(浜松市中区)で2009年1〜12月に健康診断を受けた連続6438人(男性4058人、女性2380人)を対象に検討を行った。なお、上腕血圧および中心大動脈圧の測定には、オムロン ヘルスケアの血圧脈波検査装置「HEM-9000AI」を用いた。

 検討対象の平均年齢は56.3歳、上腕血圧は125.4/76.6mmHg、中心大動脈圧は130.7mmHgであった。なお、高血圧の治療を受けていたのは全体の19.2%、同じく脂質異常では8.9%、糖尿病では7.2%であり、3疾患のうちいずれかの治療を受けている人が27.3%を占めていた。

 多変量回帰分析の結果、中心大動脈圧は性別、上腕収縮期血圧、心拍数、血清クレアチニン、尿酸、喫煙だけでなく、心電図電位(SV1+RV5)、尿中アルブミンとも独立して相関しており、一般集団においても中心大動脈圧は有用な指標となり得ることが示された。前述のASCOT試験サブ解析で報告されている通り、服薬が中心大動脈圧に影響を及ぼすことが考えられるため、薬物治療を受けていない群に限って多変量回帰分析を行ったが、ほぼ同様の結果が得られた。次に、高血圧でない患者群において多変量回帰分析したところ、中心大動脈圧は尿中アルブミンと独立して相関していたが、上腕血圧は相関していなかった。

 土肥氏はこうした結果を踏まえ、「日本人の一般集団において、中心大動脈圧は臓器障害の強力な予測因子である」と結論付けた。

(日経メディカル別冊編集)