札幌医科大学第二内科の大西浩文氏

 日本の代表的な疫学コホートである端野・壮瞥町研究のデータを用いて解析した結果、内臓脂肪型肥満(AO)と高感度CRP(hsCRP)を組み合わせることで、将来の高血圧の発症を予測できることが示された。9月26日からバンクーバーで開催中の第23回国際高血圧学会で、札幌医科大学第二内科の大西浩文氏が報告した。

 AOは高血圧や2型糖尿病、メタボリックシンドロームを発症する背景因子である。一方、炎症マーカーであるhsCRPは心血管疾患の予測因子の1つであるが、最近では高血圧発症の予測因子として有効である可能性が示唆されている。そこで大西氏らは、AOとhsCRPを組み合わせることで、肥満者のうち高血圧を発症するハイリスク群を同定できるかどうかを検討した。

 対象は端野・壮瞥町の一般住民のうち2002年に健康診断を受けた30歳以上の1516例。高血圧患者、降圧薬服用例、hsCRP≧0.5mg/dLの人を除外し、724例(男性265例、女性459例)を解析対象とした。

 対象をAOの有無とhsCRP値が中央値よりも高いか低いかを組み合わせた4群に分け、最長で5年間追跡して、高血圧の新規発症リスクを検討した。なお、AOを判定する腹囲径の基準として、アジア人のカットオフ値(男性90cm、女性80cm)と日本人のカットオフ値(男性85cm、女性90cm)を用いた。

 登録時患者背景は、腹囲が男性84c.0m、女性78.7cmで、収縮期血圧は男性122.7mmHg、女性118.4mmHg、拡張期血圧は男性71.5mmHg、女性68.7mmHg。総コレステロール値は男性190.8mg/dL、女性204.1mg/dL、空腹時血糖値は男性98.3mg/dL、女性91.8mg/dLだった。

 ベースラインにおけるhsCRP値(中央値)は男性0.048mg/dL、女性0.034mg/dLで、腹囲径が増大するほどhsCRP値は上昇し、hsCRP値が中央値よりも高い患者の割合が増加した。

 平均追跡期間3年で、男性における高血圧の発症率は、日本人のカットオフ値(85cm)を用いた場合には非AOかつhsCRP低値群26.2%、AOかつhsCRP低値群32.7%、非AOかつhsCRP高値群41.7%、AOかつhsCRP高値群43.8%であり、アジア人のカットオフ値(90cm)を用いた場合には、それぞれ27.7%、33.3%、44.3%、40.0%であった。

 一方、女性における3年後の高血圧の発症率は、日本人のカットオフ値(90cm)を用いた場合にはそれぞれ23.8%、33.3%、35.2%、46.2%、アジア人のカットオフ値(80cm)を用いた場合にはそれぞれ20.4%、36.7%、29.5%、43.4%であった。

 Cox比例ハザードモデルを用い、非AOかつhsCRP低値群を対照とし、年齢、性別、飲酒、喫煙、高血圧の家族歴、脂質異常症治療、血圧正常高値の有無を補正因子として高血圧の新規発症リスクを検討したところ、男性では日本人のカットオフ値を用いた場合に、AOかつhsCRP高値群の高血圧新規発症のハザード比は1.82(95%CI 1.02-3.25)と有意に上昇した。

 一方、女性では日本人のカットオフ値を用いた場合には有意な発症リスクの上昇は認められなかったが、アジア人のカットオフ値を用いた場合には、AOかつhsCRP高値群の高血圧新規発症のハザード比は1.69(95%CI 1.01-2.82)と有意に上昇した。

 以上の結果から大西氏は、AOとhsCRPを組み合わせれば、肥満者のうちで高血圧を発症するハイリスク例を同定することが容易になり、発症を予防するための生活習慣改善の介入を効率的に行うことができると結論した。

(日経メディカル別冊編集)