オーストラリアMelbourne大学のBryan Wai氏

 2型糖尿病患者の左室肥大心血管疾患発症の予測因子であることが示された。9月26日からバンクーバーで開催されている第23回国際高血圧学会(ISH2010)で、オーストラリアMelbourne大学のBryan Wai氏(写真)が発表した。

 左室肥大は高血圧患者や心筋梗塞後の患者において心血管疾患の発症にかかわることが知られている。一方、2型糖尿病においても左室肥大は心血管疾患発症にかかわると考えられているが、まだ十分検討がなされていない。

 そこでWai氏らは、2型糖尿病患者において、左室肥大の主要心血管疾患(MACE)発症の予測能を評価するため、554例の患者を対象として調査を行った。相対壁厚(RWT)を後壁厚×2/左室拡張末期径(LVEDD)で求め、正常RWT(≦0.42)で心重量増加がない場合を正常、正常RWT(≦0.42)で心重量が増加している場合を遠心性心肥大、RWT増加(>0.42)で心重量が増加している場合を求心性心肥大と定義した。MACEは、心筋梗塞による入院、急性冠症候群、心不全、脳卒中、冠血行再建術施行、末梢血管血行再建術施行および全死亡とした。

 2型糖尿病患者554例を平均4.9年間追跡した結果、150例がMACEを発症し(MACE群)、404例は発症しなかった(MACE非発症群)。

 これらの患者の登録時背景を比較した結果、年齢はMACE群が67歳でMACE非発症群60歳に比べて高く、2型糖尿病罹病期間はMACE群12年でMACE非発症群8年と比べて有意に長かった。HbA1cはともに7.7〜8.0と2群間で差はなく、血圧についても収縮期血圧137mmHg/拡張期血圧75mmHg(値はMACE群)で2群間に差は見られなかった。


 左室重量係数(LVMI)はMACE非発症群50g/m2に比べてMACE群57g/m2と有意に高く、左室肥大合併率もMACE非発症群50%に比べてMACE群は72%と有意に多かった。

 MACE非発症群では左室正常例が31%だったのに対してMACE群は16%と少ない反面、求心性心肥大例はMACE非発症群では28%だったのに対してMACE群は45%に上っていた。なお、遠心性心肥大例はMACE非発症群23%、MACE群26%で差は見られなかった。カプランマイヤー曲線によるMACE発症率を解析した結果、左室正常例に比べて遠心性心肥大例、求心性心肥大例ともに有意にMACE発症率が高かった。

 これらの結果からWai氏は、「左室肥大は2型糖尿病患者においても心血管疾患発症の予測因子であることが示された。2型糖尿病患者が心血管疾患を発症しないために、左室肥大の評価や肥大改善を目指す治療が有効である可能性がある」と締めくくった。

(日経メディカル別冊編集)