VALUE試験のサブ解析結果を発表するノルウエーUllevaai大学病院のT.A.Aksnes氏。

 ハイリスク高血圧患者を対象としたVALUE試験のサブ解析から、糖尿病の新規発症抑制効果がカルシウム(Ca)拮抗薬のアムロジピンよりも、アンジオテンシンII受容体拮抗薬ARB)のバルサルタンが優れるとのデータが報告された。ノルウエーUllevaai大学病院のT.A.Aksnes氏は、同試験で糖尿病を新規発症したグループに注目し、その予後を解析した。結果は18日の「大規模臨床試験:最新報告・アップデート」セッションで発表された。

 VALUE試験の対象は、ハイリスクの高血圧患者1万5245例。バルサルタン、またはアムロジピンをベースとする2つの治療に無作為で割り付けられ、心イベントを1次エンドポイントに平均4.2年の追跡が行われた。患者にはこれらのベース薬剤に加え、目標血圧の140/90mmHgに達するまで、ヒドロクロロチアジドや他の降圧薬(バルサルタンやアムロジピンに影響しないもの)の追加が行われた。

 登録時、既に糖尿病を有していた患者(既存DM群)は5250例だった。一方、試験中に糖尿病を新規発症した患者(新規DM群)は1298例、未発症(未DM群)は8697例だった。Aksnes氏らは、新規DM群と未DM群の予後を試験期間内にて比較し、そこから興味深い知見を得た。

 ちなみに、本試験における糖尿病の新規発症は、(1)副作用として報告された糖尿病、(2)糖尿病治療薬の新たな投与、(3)試験終了時点での空腹時血糖値≧126mg/dL、のいずれかで定義されていた。また、今回は試験薬群での区別を行わず、症例は一括して解析された。

 解析の結果、新規DM群では未DM群に比べ、心疾患を合併する率が非常に高かった。その相対リスクは、致死性または非致死性の心筋梗塞が1.30倍(0.99-1.70)、入院または死亡の心不全が1.41倍(1.06-1.87)、心筋梗塞または心不全の罹患が1.43倍(1.16-1.77)であった。なお、既存DM群での各リスクは未DM群に比して1.73倍、2.79倍、および2.20倍であり、それぞれが新規DM群を上回っていた。

 一方、死亡に関しては、予想に反して、新規DM群でのリスクが最も低下していた。前述と同様、未DM群を基準に相対リスクを求めると、全死亡は既存DM群で1.41倍だったが、新規DM群では0.61倍(0.48-0.77)。心臓死は既存DM群で1.76倍だったが、新規DM群では0.44倍(0.28-0.70)だった。

 これは難解なデータだが、少なくとも「死亡を減らすためには糖尿病になるべきだ」と解釈する人はいないだろう。

 Aksnes氏は、新規DM群では総死亡の絶対数が少ないことから、統計学的な信頼性に劣ると前置きした上で次のように考察した。「新規DM群では、糖尿病発症後の薬物療法が強化されたためか、アスピリンやスタチンなどの使用が有意に高かった。これが死亡リスクの低下を説明する要素の一つと考えられる」。
 
 糖尿病の新規発症が患者と担当医に大きなインパクトを与え、生活習慣のより厳格な是正へとつながったのかもしれない。データには示されなかったものの、新しい糖尿病薬を含んだ積極的かつ集学的な治療が、死亡率を引き下げた可能性も否定はできない。

 いずれにせよ、糖尿病を新規発症した高血圧患者では、思いのほか心疾患に至る危険性が高まることは間違いない。何かしらの介入を行って糖尿病の発症予防に努めるべきであり、その意味においてバルサルタンは十分に期待し得る薬剤と思われる。