日本初の高血圧介入大規模臨床試験The JIKEI HEART Studyの結果を報告する東京慈恵医大の望月正武氏。

 日本初の高血圧介入大規模臨床試験The JIKEI HEART Study(登録患者数3081例)の結果が、18日の「大規模臨床試験:最新報告・アップデート」セッションで報告になり、「ACE阻害薬やCa拮抗薬などを使った従来治療にバルサルタンを追加投与することで予後が有意に改善される」とのエビデンスが注目を集めた。報告者は同試験チェアマンの東京慈恵医大循環器内科教授の望月正武氏とコ・チェアマンのスウェーデンSahlgrenska大学教授のBjorn Dahlof氏。

 The JIKEI HEART Studyの対象は、カルシウム(Ca)拮抗薬やアンジオテンシン転換酵素(ACE)阻害薬を含む従来治療を受けている虚血性心疾患または心不全を伴う日本人高血圧患者(22〜79歳:平均65歳)。約33%に虚血性心疾患、11%に心不全の合併が認められた。

 同試験では、従来治療にアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)のバルサルタン(平均75mg/日)を追加投与したバルサルタン群(1541例)と、バルサルタンを含めたいかなるARBも使用せずに従来治療を続行した従来治療群(1540例)に対象を無作為に割り付けて予後に与える影響が検討された。

望月氏と共に臨床試験結果を報告したスウェーデンSahlgrenska大学教授のBjorn Dahlof氏。

 試験デザインはPROBE法(前向き・無作為化・オープン・エンドポイント非開示)。試験開始時には両群ともに67%にCa拮抗薬、35%にACE阻害薬、32%にβ遮断薬などが投与されていた。従来治療群ではこれらの薬剤の増量(非使用の場合は新規選択)により降圧が試みられた。同試験は、極めて臨床に近い形で組まれた試験といえる。

 プライマリーエンドポイントは脳卒中、初発および再発のTIAや急性心筋梗塞、心不全や狭心症の新規発症および増悪、大動脈瘤解離、下肢動脈閉塞、透析への移行、血漿クレアチニン値の2倍化。高血圧は一連の心血管系疾患の発症・進展に深く関与することから、このような複合心血管エンドポイントが設定された。

 同試験は、試験開始時における両群の血圧値が139/81mmHgと、これまで世界で行なわれた高血圧大規模臨床試験の中で最も低い血圧値からの介入となった。それにもかかわらずARBバルサルタン群では131/77mmHg、非ARB群132/78mmHgという、やはりこれまでの高血圧大規模臨床試験(腎障害を伴う高血圧臨床試験を除く)では得られなかった降圧が達成された。そして、到達血圧値に両群間で有意差がなかったことから、血圧差による影響を排除した形で両群間の予後を比較することが可能となった。

 試験は追跡3年を越えた時点で、バルサルタン群の利益が明白であることから、データ安全モニタリング委員会(DSMB)の勧告により早期終了となった。ARBバルサルタン群では従来治療群よりもプライマリーエンドポイントが39%、脳卒中(新規および再発)が40%、入院を要する心不全が46%、入院を要する狭心症が65%、大動脈瘤解離が81%、各々有意に減少するとの、これまでの欧米におけるバルサルタン大規模臨床試験を大きく上回るエビデンスが得られた。急性心筋梗塞に関しては両群間で有意差はなかった。

 The JIKEI HEART Studyで得られた欧米をしのぐ成績は、我が国のきめ細かな医療体制下で、120人の心臓専門医(東京慈恵医大循環器内科とその関連病院)によって試験が実施されたことが好影響を与えた可能性がある。いずれにせよ、「Ca拮抗薬やACE阻害薬の増量よりも、ARBバルサルタンを上乗せした方が日本人高血圧患者の予後を良い方向に導く」という同試験のメッセージは、臨床現場に大きなインパクトを与えそうだ。