食塩感受性高血圧モデルであるDahlラットの腎動脈については、血管拡張能の低下や一酸化窒素(NO)調節血管内皮機能の異常などが報告されている。しかし、これら機能異常に関する正確なメカニズムは不明なままになっていた。大阪市立総合医療センターの今西政仁氏らの研究グループは、高血圧を伴う糖尿病性腎症患者を対象とした臨床実験から、NO合成低下と食塩感受性の関連を示すと共に、アンジオテンシンII受容体拮抗薬ARBバルサルタンが果たす役割を明らかにした。研究成果は16日のポスターセッションで報告された。

 腎におけるNOは、血管拡張作用やメサンギウム細胞弛緩によって腎糸球体の循環調節を行い、尿細管糸球体フィードバックやナトリウム再吸収の調節にもかかわっている。一方、糖尿病や高血圧などでは腎組織障害に加えて、NOによるこれらの働きが障害されるという。また、糖尿病患者や高血圧患者では一般人口に比べ、高い食塩感受性を示すことも知られている。食塩感受性を示す高血圧は糸球体血圧の上昇を伴い、進行性の腎障害を招くだけでなく、夜間高血圧など心血管系リスク因子が集積した状態とされる。

 このように様々な知見が得られているものの、食塩感受性とNOの関連はいまだ明確にされていなかった。そこで演者らは、高食塩食事といった比較的低侵襲性の臨床実験を行い、NO合成低下と食塩感受性が関係することを示した。その対象は、HbA1Cが高値(平均7.5〜7.9%)の12例(平均60歳)。うち6例はアルブミン尿を認めない正常血圧(以下、AH-DM群)、残り6例はアルブミン尿を認める高血圧(平均140/80mmHg、以下、AH+DM群)であった。

 各々には1週間毎の食塩制限食事と高食塩食事が与えられ、圧ナトリウム利尿曲線(Guytonらが提唱)から食塩感受性指数が求められた。それと同時に、血中マーカー(BH4/総biopterin)と尿中動態から、NO合成系の変化が推定された。

 結果として、AH-DM群に比べ、AH+DM群では食塩感受性の亢進が認められ、かつNO合成には相対的低下が示唆された。一方、AH+DM群にバルサルタン80mg/日を2週間以上投与したところ、その食塩感受性指数はAH-DM群の値に近づき、NO合成にも有意な回復が認められた。さらに、高食塩食事によって著明に増加するAH+DM群の酸化ストレスを、バルサルタンは有意に抑制していた(尿中8-OHdGにて測定、P=0.023)。

 以上のことから演者は、食塩感受性の背景にNO合成の障害が関与しており、バルサルタンは酸化ストレスの軽減を介してそれらを改善する可能性があると考察した。