「酸化ストレスでコロイドがはずれて金属が遊離し、抗酸化作用を示す」と語る東大病院の金子知代氏。

 メタボリックシンドロームによる心血管障害の治療として、新規の抗酸化物質としての白金ナノ粒子の有用性がモデルマウスの実験で明らかになった。成果は、東大病院腎臓内分泌内科の金子知代氏と講師の下澤達雄氏らの研究グループが、17日の一般口演「酸化ストレスと抗酸化物質」セッションで発表した。

 白金などの金属が触媒作用によってフリーラジカルを除去することは既に知られている。研究グループは、東大大学院新領域創成科学研究科教授の宮本有正氏との共同研究により、まずin vitroで、白金ナノ粒子が触媒作用によって活性酸素種(ROS)であるスーパーオキシドや過酸化水素を除去することを確認した。

 続いて肥満モデルマウス(db/db マウス)に、血圧を上げる作用のあるアンジオテンシンIIと高塩分食を与えて高血圧を発症させ、メタボリックシンドロームのモデルを作製した。これに毎日、水と共に白金ナノ粒子を飲ませ、4週間の変化を観察した。

 この結果、正常なマウス(n=6)の収縮期血圧は113mmHgだが、白金ナノ粒子を投与していないモデルマウス(n=6)では136mmHgと高く、投与したモデルマウス(n=6)では129mmHgに低下した。コレステロール値は正常なマウスは150mg/dL、非投与マウスは151 mg/dLと同程度だったが、投与マウスでは140 mg/dLに低下していた。

 また酸化ストレスマーカーである尿中8-iso-PGF2αの量が、白金ナノ粒子の投与で有意に低下することが確認され、組織学的には冠動脈の繊維化を50%縮小した。このことから、白金ナノ粒子は臓器障害を引き起こす活性酸素を除去する抗酸化物質であると研究グループは結論付けた。

 気になるのは体内に入った白金の排出。発表後のディスカッションでも、そこに質問が集中した。金子氏によれば、尿中に白金が排出されることは確認済みで、組織学的にも白金の沈着は見られないという。また長期間、金属が体内に滞留する点について、「通常は金属の周囲をコロイドが包んでいるため、臓器への悪影響は避けられ、酸化ストレスが加わったときにはコロイドがはずれて金属が遊離し、抗酸化作用を示す」と語った。