米UCLAのLucas Restrepo氏

 脳卒中ではないが脳卒中類似症状を呈するstroke mimics(SM)の特徴は若年、血圧が低め、神経学的症状が軽度である――。FAST-MAG試験の成果の1つで、米UCLAのLucas Restrepo氏(写真)らが、2月24日から26日まで米サンアントニオで開催された国際脳卒中学会(ISC2010)で報告した。

 脳卒中の発症後、現場の救急隊員が迅速な処置を行うことができれば、予後の改善が期待できる。しかし、神経学的な症状を訴えて救急搬送される患者のうち、脳卒中以外が原因のものは脳卒中の10倍に上る。そのため、脳卒中の初期対応の向上を目指す臨床試験および実際の対応を考える際には、高精度の脳卒中診断が求められる。

 今回の報告は、FAST-MAG(the NIH Field Administration of Stroke Therapy - Magnesium)試験の第III相における初期診断の妥当性を検証した結果。FAST-MAGは、症状出現から2時間以内に行う救急隊員による硫酸マグネシウム投与の効果をプラセボ対照二重盲検試験で検証する試験だ。

 脳卒中患者の識別は、救急隊員がLos Angeles Prehospital Stroke Screen (LAPSS)でまずスクリーニングし、試験に参加する脳神経科医に携帯電話で簡単な報告を行う。連絡を受けた医師は患者あるいは家族に試験の説明を短時間で行い、脳卒中と疑われるか否かを診断する。試験デザインの検討では、この手順を踏むことでSMのエントリーは全体の5%程度に抑えられると想定している。

 今回の分析の対象としたのは、FAST-MAGの最初のエントリー患者567人。救急現場で試験薬(硫酸マグネシウムあるいはプラセボ)を投与するまでの平均時間は35±52分だった。3カ月後の最終診断は急性脳梗塞が411人(72.5%)、脳出血が136人(24%)で、SMは20人(3.5%)だった。

 SMの最終診断は「seizures」6人、脳腫瘍6人、不安2人、偏頭痛2人、低血糖を合併する代謝異常1人、尿路性敗血症1人、その他が3人だった。

 脳梗塞あるいは脳出血の患者と比べ、SMの患者の特徴は、年齢が低い(64±13歳 対 70±13歳、p=0.06)、収縮期血圧が低い(141mmHg 対 159mmHg、p=0.012)、神経学的症状が軽度(NIHSS 5.6 対 9.3、p=0.009)といったものだった。「興味深いことに」(Restrepo氏)、心血管リスクは糖尿病を除いて脳卒中患者もSMも同等だった。

 この結果を受けてRestrepo氏は、「LAPSSと脳神経科医による電話スクリーニングは、本試験におけるSMのエントリーの適正化に効果的であることが確認できた。若い、血圧が通常、神経学的症状が軽度という患者ではSMを考慮すべき」とした。

(日経メディカル別冊編集)