新日鐵八幡記念病院脳神経外科の鈴木聡氏

 一般に抗血小板薬は血栓形成を抑制するだけでなく、出血を促進する恐れがあることから出血性疾患の治療には使用されないが、シロスタゾールには血小板凝集を抑制するとともに、血管を拡張させたり血管内皮機能を改善する作用があるとされ、それらが統合して血管を保護する方向に働くと推定されている。このようなシロスタゾールの特性に注目し、クモ膜下出血患者の予後に及ぼす影響を検討した成績が、2月24日から26日まで米サンアントニオで開催された国際脳卒中学会ISC2010)で報告された。

 この成績を報告したのは新日鐵八幡記念病院脳神経外科の鈴木聡氏。クモ膜下出血発症後72時間以内に動脈瘤頸部クリッピング手術を施行された患者100例をシロスタゾール投与群と対照群に無作為割付し、経過を観察した。術後2週間、シロスタゾールは経管投与した。シロスタゾールの効果は、症候性血管攣縮および脳梗塞の発生率、また退院時のmRS(障害の有無や程度を示す修正ランキンスケール)を指標として評価した。

 シロスタゾール群には49例、対照群には51例が割りつけられた。年齢、性別、発症前のmRS、重症度(Hunt & Kosnikグレード)、CT所見(Fisher分類)、破裂動脈瘤部位などの背景因子には両群間で有意差は見られなかった。

 入院中の症候性血管攣縮の発生はシロスタゾール群が22.4%で、対照群は37.4%。脳梗塞の発症率はシロスタゾール群10.2%、対照群27.5%だった。症候性血管攣縮、脳梗塞ともシロスタゾール群で低頻度であったが、対照群との差は有意でなかった。

 両群の違いが明らかになったのはmRSの変化である。発症前におけるmRSの平均値はシロスタゾール群0.12、対照群0.17で有意差はなかったが、退院時はそれぞれ1.5、2.6であり、シロスタゾール群で有意に低かった(p=0.0041)。

 シロスタゾール群はmRSスコアが2以下と良好であったが、それに関連する因子を検討したところ、年齢65歳以下、Hunt & Kosnikグレード1〜2(症状が比較的軽度)、Fisher分類3以下(出血が軽度)、シロスタゾール投与が独立した予測因子であることが判明した。中でも、シロスタゾール投与は影響が強かった。

 鈴木氏は以上の成績に基づき、「クモ膜下出血患者にシロスタゾールを投与すると後遺症を抑制して機能予後を改善する可能性がある」との見解を示した。

(日経メディカル別冊編集)