米オレゴン健康科学大学のWayne M Clark氏

 頸動脈硬化症に対するステント留置術CAS)と内膜剥離術CEA)の心血管イベント抑制効果を比較検討したCREST試験の第一次解析の結果が発表された。CASとCEAを直接比較した世界最大規模の無作為化比較試験として注目を集めたが、結果は両者の心血管イベント抑制効果は同等というもので、ともに安全かつ効果的な治療手段として甲乙つけがたい存在であることが示された。2月24日から26日まで米サンアントニオで開催された国際脳卒中学会ISC2010)最終日のLate-Breaking Science Sessionで、米オレゴン健康科学大学のWayne M Clark氏(写真)が報告した。

 頸動脈硬化症は虚血性脳卒中原因の10%近くを占める病態であり、その治療には内科的なCASと外科的なCEAという選択肢があるが、両者の優劣は明らかになっていない。Clark氏らは、2000年から米国108施設、カナダ9施設の協力のもと約2500人の患者を募り、この両者の有効性と安全性を比較するCREST試験を推進してきた。今回は、その最初の解析結果の報告である。

 対象は、有意な狭窄を有する症候性・非症候性の頸動脈硬化症患者である。「有意な狭窄」の定義は、症候性の場合は、血管造影検査で≧50%の狭窄が認められるか超音波検査で≧70%の狭窄が認められる患者、もしくは超音波検査で50〜69%の狭窄が認められ、なおかつ血管造影検査によって>70%の狭窄が認められる患者である。また、非症候性の場合は、血管造影検査で≧60%の狭窄が認められるか超音波検査で≧70%の狭窄が認められる患者、もしくは超音波検査で50〜69%の狭窄が認められ、なおかつ血管造影検査で>80%の狭窄が認められる患者とされた。

 同試験への登録は2008年6月に終了。症候性1321例(53%)、非症候性1181例(47%)の計2502例が登録された。患者の平均年齢は69歳、女性比率は35%であった。演者らは、これらの患者をCAS群(n=1262)またはCEA群(n=1240)に無作為に割り付け、最長4年間(平均2.5年)にわたって追跡した。

 主要評価項目は、周術期(30日以内)における臨床的脳卒中と心筋梗塞(MI)、死亡、ならびに術後4年後までに発生した同側性脳卒中からなる複合エンドポイントの発生である。また、副次的評価項目として、症候の有無や性・年齢による効果の違いなどが検討された。

 その結果、上記の複合エンドポイントの発生率は、CAS群が7.2%、CEA群が6.8%であり、両群間に差は認められなかった(ハザード比1.11、95%信頼区間;0.81-1.51、p=0.51)。この傾向は症候性、非症候性、また性別にかかわらず一貫してみられたが、年齢別では69歳まではCASの成績がCEAに勝り、70歳以上ではCEAの成績がCASに勝るというパターンが認められた(p=0.020)。

 また、複合エンドポイントの個々の構成要素別にみると、「周術期のイベント発生率」という括りでは両群に差は認められなかった(CAS群5.2% 対 CEA群4.5%、p=0.38)が、それを脳卒中とMIに分けてみた場合、脳卒中はCAS群で有意に多く(CAS群4.1% 対 CEA群2.3%、p=0.01)、MIはCEA群で有意に多い(CAS群1.1% 対 CEA群2.3%、p=0.03)ことが明らかとなった。

 以上の結果より、演者らは「CEAとCASの総合的な評価は同等と位置付けられる」と結論した。ただし、CEAは脳卒中が少ない一方、CASはMIが少ないことや、比較的若年層ではCASの効果が高いのに対し、高齢の患者ではCEAの効果が高いことなど、両者のリスクおよびベネフィットのプロファイルは異なり、患者背景に応じたテーラーメードの治療法選択が望ましいことが示唆された。

 Clark氏は、「経験豊富な施設であればCEAとCASのいずれの手技を選択しても周術期の合併症は少なく、優れた長期成績が期待できる」とし、「CEAとCASはともに脳卒中予防のための有用なツール。優れた2つのツールを使い分けできることは歓迎すべきことだ」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)