米ブラウン大学退役軍人医療センターのAlbert C Lo氏

 「脳卒中後の機能回復は遅くとも12カ月以内が勝負」と考える向きは少なくないだろう。だが、従来に比べて入念なリハビリテーションを行えば、発症から何年も経った人でもかなりの機能回復が望めることが示された。しかも、人に代わってリハビリをアシストするロボットを使った場合も同じように有効であるという。2月24日から26日まで米サンアントニオで開催された国際脳卒中学会ISC2010)最終日のLate-Breaking Science Sessionで、米ブラウン大学退役軍人医療センターのAlbert C Lo氏(写真)が発表した。

 この知見は、ロボットを利用した強化リハビリの効果と安全性を、人手をかけた強化リハビリおよび通常のリハビリと比較する無作為化比較試験VA ROBOTICSを遂行するなかで得られた。本試験の対象は、脳卒中発症から6カ月以上経過し、上肢に重度の障害(Fugl-Meyerスコア 7?38)が遺った退役軍人127例である。患者の平均年齢は65歳、Fugl-Meyerスコアは平均18.9、発症からの期間は0.5?23.6年(平均4.7年)であった。

 これらの患者は無作為化のうえ、(1)ロボット強化リハビリ群(RT群、n=49)、(2)マニュアル強化リハビリ群(ICT群、n=50)、(3)通常リハビリ群(UC群、n=28)のいずれかに割り付けられた。そのうえで、RT群には複数のロボットを使って重点的に腕を動かす36セッションのリハビリが、ICT群にはRT群と同部位・同程度の運動になる既存の器具や方法を使ったリハビリが、それぞれ12週間にわたって実施された。一方、UC群には通常通りのリハビリが行われた。

 主要評価項目は、ベースライン時および6、12、24、36週後のFugl-Meyerスコアと安全性である。また、副次的評価項目として、Wolf Motor Function Test(WMFT)、Stroke Impact Scale(SIS)が検討された。

 その結果、12週後の時点では、RT群とUC群のFugl-Meyerスコア改善度には有意な差は認められなかったが、36週後の評価時にはRT群の改善度がUC群を有意に上回った(スコア変化の差2.88、p=0.016)。同様に、WMFTとSISについても、RT群ではUC群を有意に上回る改善が認められた(WMFT変化の差−8.10、p=0.005、SIS変化の差5.95、p=0.04)。

 一方、RT群とICT群の間には、12週後、36週後のいずれの時点においても上記の指標変化に有意な差は認められなかった。

 治療に関連した重篤な有害事象の発現は、いずれの群においても皆無であった。また、治療に関連した軽度の有害事象はRT群で24%、ICT群で18%にみられ、特にRT群では痛みや凝り、疲労の訴えが目立ったが、いずれも軽度で対応可能な症状であった。

 以上の結果より、ロボットを用いた強化リハビリは安全であり、ロボットを用いた場合・人手をかけた場合の別にかかわらず、強化リハビリには通常のリハビリ以上の運動機能改善効果が期待できることが示された。しかも、本検討の対象は発症から間もない患者ではなく、平均で4.7年、最長で23.6年を経た患者であったにもかかわらず、強化リハビリによって機能改善が得られたことの意義は大きい。Lo氏は「この発見は、脳卒中の後遺障害に悩むすべての患者に希望を与えることになるだろう」との見解を示した。

(日経メディカル別冊編集)