ドイツ・エッセン大学病院のHans-Christoph Diener氏

 昨年、RE-LY試験Randomized Evaluation of Long-Term Anticoagulant Therapy)によって「効果は高いが使いにくい」ワルファリンに対する非劣勢が証明され、「使いやすく効果も高い次代の抗凝固薬」の呼び声が高いdabigatran。その有用性を二次予防に特化して検討したサブ解析の結果が、2月24日から26日まで米サンアントニオにて開催された国際脳卒中学会ISC2010)最終日のLate-Breaking Science Sessionで発表された。RE-LY研究グループを代表して登壇したドイツ・エッセン大学病院のHans-Christoph Diener氏(写真)は、脳卒中/全身性塞栓症抑制におけるdabigatranの優越性は証明されなかったものの、出血性脳卒中の発症はワルファリン使用時より70%以上も抑制されたことを報告した。

 Dabigatranは、トロンビンへの直接的な阻害作用を持つ抗凝固薬であり、患者の年齢・性別・体重などにかかわらず、固定用量の経口投与によって速やかに、かつ安定した効果を発揮する。RE-LY試験では、1万8113人の心房細動(AF)患者を2年にわたって追跡し、現在のゴールドスタンダードであるワルファリンとdabigatranの脳卒中予防効果を比較した。その結果、主要評価項目である脳卒中+全身性塞栓症についてはdabigatranの非劣勢が、副次的評価項目である出血性脳梗塞については同剤の優越性が証明された。

 同試験の対象となった1万8113例のうち3623例(dabigatran 110mg群1195例、同150mg群1233例、ワルファリン群1195例)は、すでに脳卒中またはTIAの既往をもつ患者であった。今回Diener氏は、これらの患者に特化したサブ解析を行うことにより、dabigatranの二次予防効果の検証を試みた。

 その結果、各群における脳卒中+全身性塞栓症の発症年率は、ワルファリン群が2.74%、dabigatran 110mg群が2.32%、同150mg群が2.07%と、dabigatran群でやや低率であったものの、有意差は認められなかった。

 しかしながら、出血性脳卒中の発症年率は、ワルファリン群では0.77%だったのに対し、dabigatran 110mg群では0.08%、同150mg群で0.20%にとどまり、相対リスク低下はそれぞれ89%、73%となった(それぞれp=0.003、p=0.009、対ワルファリン群)。同様に、脳卒中を含めた頭蓋内出血についても、dabigatran 110mg群では80%、150mg群では59%の相対リスク低下が認められた(それぞれp<0.001、p=0.007、対ワルファリン群)。

 なお、脳卒中/TIA既往者以外も含めた主解析では、ワルファリン群に比べてdabigatranを投与した2群における心筋梗塞(MI)発症率が若干高めであったことが報告されている。同様の現象は、類薬であるximelagatranにおいても報告されており、抗トロンビン薬に共通するなんらかの有害作用が存在する可能性が指摘されている。しかしながら、脳卒中/TIA既往例のみを対象とした今回のサブ解析では、3群のMI発症率に有意な差は認められなかった。

 以上の結果から、dabigatranは脳卒中あるいはTIAの既往をもつ患者の二次予防策としても有用であり、特に出血性脳卒中の予防においてはワルファリンを有意かつ著明に上回る効果が期待できると考えられる。Diener氏は、残された課題として、PROBEデザインゆえのバイアスの可能性、観察期間(2年)という短さ、万一の場合にdabigatranの作用を抑える薬剤がないことなどを挙げ、これらの課題の解決に向けて研究を重ねていきたいと述べた。

(日経メディカル別冊編集)