カナダ・カルガリー大学のEric E. Smith氏

 脳卒中は世界各地で主要な死亡原因になっているが、脳卒中死の多くは入院中に発生する。したがって、個々の患者の入院時に死亡の危険度を予測できれば、その後の処置や対策を考える上で有力な情報となるが、信頼性の高い予測法はまだ確立していない。2月24日から26日まで米サンアントニオで開催された国際脳卒中学会(ISC2010)では、脳卒中入院患者の大規模なデータにもとづき入院中死亡リスクを高い精度で評価し得る方法が示され、注目を集めた。

 この成績を報告したのはカナダ・カルガリー大学のEric E. Smith氏。北米では米国心臓協会(AHA)および米国脳卒中学会(ASA)が脳卒中患者の治療水準を向上させるためのGet With The Guidelines(GWTG)-Strokeという活動を展開しており、その一環として入院患者の登録と情報の収集が行われている。Smith氏らはGWTG-Strokeに参加する病院から、2001〜2007年の間に退院した脳卒中患者の入院中のデータを入手して解析した。脳卒中による入院患者は国際疾病分類(ICD)-9により同定し、患者データには紹介医からの情報、病棟の記録、神経学的診察の結果などを含めた。

 Smith氏らは既に昨年、多変量解析により死亡リスクに有意な影響を及ぼす因子を報告しており、今回はこれらの因子にスコアを配置したリスク評価システムの有効性を検討した。1046病院から入院脳卒中患者40万8412例のデータが提供され、転院例や退院先不明の症例などを除いた33万3865例を解析対象とした。全解析対象患者のうち60%を無作為に選んで因子抽出サンプルとし、残りの40%を検証サンプルとして解析した。対象患者における病型別頻度は脳梗塞82.4%、脳出血11.2%、くも膜下出血2.6%、不明3.8%だった。

表1 入院中死亡のリスクスコア

 年齢、入院の様式、性・合併症・既往歴、脳卒中の病型に基づくリスク評価法とこれらの因子にNIH脳卒中スコア(NIHSS)による重症度判定を加えた評価モデルについて検討したが、いずれも予測されたリスクと観測されたリスクは高い相関を示した。NIHSSを含めたモデルのリスクスコアを表1に示す。

 Smith氏によれば、脳卒中の病型にかかわりなく入院中の死亡リスクを予知できる方法はこれまでになかったものであり、実地臨床での使いやすさが向上したという。また、高い精度でリスクを評価できることから、GWTG-Strokeのホームページではこの評価法を組みこんだ患者管理システムも提示しており、「今後、普及していく可能性が高い」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)