服薬やモニタリングの頻度はどれだけ遵守されているのか? 日常臨床において、また、臨床試験の結果や解釈を大きく左右するアドヒアランスについて、その予測因子や向上のための効果的な介入などは詳細に検討された例がない。アドヒアランスに関連する患者の特徴や臨床所見を探るため、米Yale大学医学部のZe Zhang氏は、脳卒中予防の臨床試験のデータからアドヒアランスの実態を分析し、2月24日から26日まで米サンアントニオで開催された国際脳卒中学会ISC2010)で結果を報告した。

 Zhang氏らがアドヒアランスの分析する上での対象としたのは、IRIS(Insulin Resistance Intervention after Stroke)試験。TIAあるいは非心原性の脳梗塞既往で、糖尿病の診断はないがインスリン抵抗性を呈する40歳以上の患者を対象にピオグリタゾンによる再発予防効果を5年間に渡って検証した。Zhang氏らは、IRIS試験の被験者3136人のうち、試験に1年以上参加し、服薬しなかった薬瓶を1本以上返却、服薬中断指示のない病態、という条件を満たした被験者について、服薬アドヒアランスの状況と患者背景や臨床所見の関係を調べた。

 アドヒアランスの状況は、最初の1年に試験のプロトコルに定められた処方量80%以上を服用していた場合を「良好」とし、患者背景や臨床所見との相関についてロジスティック回帰分析を用いてオッズ比を算出した。相関を探索する対象は、年齢、性別、人種、民族性、配偶者の有無、教育レベル、また、脳卒中既往歴、LDLコレステロール値、鎮痛薬の使用、抗うつ薬の使用、血圧、BMI、認知機能、上肢の筋力などとした。

 アドヒアランスの分析の対象となったのは1197人で、869人(73%)が「良好」だった。多変量解析の結果、アドヒアランス「良好」との相関が明らかになったのは「男性」(オッズ比=1.89、95%信頼区間;1.45-2.48、p<0.0001)、「脳卒中の既往なし」(オッズ比=1.48、同;1.02-2.16、p=0.04)、「LDL<100」(オッズ比=1.42、1.07-1.88、p=0.01)の3つだった。

 もっとも、これら3つの予測因子がアドヒアランスの良否に関わる割合は4%に過ぎないという結果も同時に示された。そこで、Zhang氏らは60分間にも及ぶインタビューが可能な被験者22人に、服薬の動機付け、IRIS試験の理解と受容、服用を忘れないために役立っていること、副作用予測などの状況を聴取した。

 IRIS試験に限られたごく少ない対象数ではあるが、その聞き取り調査の結果と感触を踏まえ、Zhang氏は「従来の試験で調べられている患者背景や臨床所見がアドヒアランスに寄与する割合はかなり低いが、服薬の動機付け、試験に対する理解度と受け入れ感、薬の効果などの因子の中から、重要なものが今後の検討の中で明らかになるのではないか」と展望を示した。

(日経メディカル別冊編集)