米カリフォルニア大学アーバイン校のMark Fisher氏

 高齢者では脳内微小出血が一般的に起こっていることが、病理学的な解析から明らかになった。成果は、米カリフォルニア大学アーバイン校のMark Fisher氏(写真)らが、2月24日から26日まで米サンアントニオで開催された国際脳卒中学会(ISC2010)で発表した。

 脳卒中患者でMRIが頻繁に用いられるようになり、高齢者においては脳内微小出血がかなりの頻度でみられ、病態として重視されてきている。微小出血は、脳アミロイド血管症や高血圧に起因するものであるとされているが、病理学的な特徴を明らかにする上で、さらなる検討が求められている。Fisher氏らはこの問題意識のもとに、臨床的に脳血管疾患との診断がない中で死亡した24例(平均年齢84.7歳、71-104歳)の解剖脳標本を調べ、高齢者における脳内微小出血について病理学的な解析を試みた。

 脳内微小出血については、剖検脳組織におけるヘモシデリンの分布に着目し、通常の組織化学的手法とプルシアンブルー染色により同定した。マクロファージおよび毛細血管周皮細胞中の鉄の細胞局在は、マクロファージに存在するCD68のマウス由来モノクローナル抗体、平滑筋アクチンのモノクローナル抗体を用いて免疫組織化学的に探索した。また、標本によっては電子顕微鏡を用いた解析も行った。なお、βアミロイドの確認は、エピトープを認識する6E10抗体で分析した。

 検討の結果、病理学的な検査により、脳内微小出血は24検体中14件(58%)で確認され、脳内微小出血は、「ごく普通に見られる」ことが示された。

 Fisher氏らはまず、女性3、男性9の計12例(71〜92歳)の剖検脳組織を対象に検討した。このうち、2つの検体で脳内微小出血が確認された。この2検体を含む9例に高血圧の既往があった。続いて、男性2、女性10の計12例(77〜105歳)の剖検脳組織を対象とした検討を行い、12検体で脳内微小出血が確認された。このグループでは、5例に高血圧の既往があり、7例にはなかった。また、脳内微小出血が確認された14検体の96%(13検体)では、被殻において微小出血が生じていることが確認された。残りの1件は、後頭葉の皮質下白質で生じていた。

 微小出血の病理学的な特徴として、総じて毛細血管および細動脈レベルで出血が生じており、そこにはβアミロイドの沈着は見られず、アミロイド血管症に起因する出血ではない点が明らかになった。このほか、細動脈での微小出血ではマクロファージ中に鉄の存在が確認されたのに対し、毛細血管の場合は周皮細胞とマクロファージの両方で鉄の局在が観察された。

 Fisher氏らは、「本試験ではMRIと病理学的な相関については検討しなかった」としつつも、今回得られた知見から、臨床的に脳卒中歴がなく、また脳アミロイド血管症がない場合であっても、「高齢者では脳内微小出血は、かなりの頻度であることが示された」と結論した。また、毛細血管レベルで微小出血があることが明らかになったことから、「血液脳関門の機能障害が、脳微小出血の原因の一つであることを示唆している」と考察した。

(日経メディカル別冊編集)