身体を動かして楽しめるゲームが人気の“Wii”を、脳卒中後の運動機能の回復に応用できるのではないか――。このアイディアの実現可能性が無作為化比較試験で検証された。報告者は、カナダ・トロント大学St. Michael病院のGustavo Saposnik氏ら。同氏らは、スポーツや家事の動きを取り入れたWiiのバーチャルゲームを実践した患者群では、同じ時間を娯楽要素の強いゲームに費やした患者群に比し、運動機能の回復が良好であったとするEVRESTEffectiveness of Virtual Reality Exercises in STroke Rehabilitation)試験の結果を、2月24日から26日まで米サンアントニオで開催された国際脳卒中会議(ISC2010)で発表した。

 EVREST試験の対象は、脳卒中発症から6カ月以内で、手・腕にChedoke-McMaster scaleスコア3以上の機能障害のある患者22人。これらの患者は、娯楽的要素の強いゲームを行う群(RT群、n=11)とWiiのバーチャルゲームを行う群(VRWii群、n=11)とに無作為に割り付けられ、それぞれに課されたゲームを1セッション当たり60分、2週間で8セッション行ってもらった。

 VRWii群に課されたゲームは、ラケットに見立てたリモコンを振ってプレイする「Wiiテニス」と、同じくリモコンを調理器具に見立てて食材を切ったり盛りつけたりする「クッキングママ」の2つ。大きな筋肉の運動が要求される前者と手先の細やかな動きが要求される後者を30分ずつ、計60分のプレイが1セッションとなる。一方、RT群には、カードゲーム、ビンゴ、Jengaなどが供された。

 試験の第一の目的は、このアイディアが実行可能かどうかを確認することである。したがって、主要評価項目には安全性とともに、セッション完遂率やセッション時間など、患者が実際にこなせたかどうかを評価する項目が設定された。

 副次的評価項目は有効性であり、ベースライン時と治療4週後のStroke impact scale(SIS)、Wolf motor function test(WMFT)、Box and block test(BBT)の各指標と握力の変化が比較された。

 その結果、全8回のセッションを完遂した患者の数は、RT群が8人(80%)、VRWii群が9人(90%)であり、1人当たりのセッション総時間は、それぞれ388時間、364時間であった。また、一部の患者が軽い疲労を訴えた以外に目立った副作用もみられなかったことから、これらの課題は十分実行可能だと考えられた。

 一方、4週間後の有効性の各指標は、両群ともにベースライン時より若干改善されていたが、年齢とベースライン時のMWFT、脳卒中重症度について補正後のWMFT変化は、VRWii群の方がRT群より有意に大きかった(-7.4秒、95%信頼区間;-14.5〜-0.2)。また、統計的有意には至らなかったが、握力変化についてもVRWii群がRT群より優れる傾向にあった(1.9kg、95%信頼区間;-2.5−6.2)。

 以上のように、Wiiのバーチャルゲームは、脳卒中後のリハビリ手段に求められる安全性と実行可能性を満たし、運動機能の回復を助ける有用な手段であることが、小規模ながらも無作為化比較試験によって世界で初めて示された。この結果が普遍的なものであることを証明するためには、より大きな規模の試験による検証が必須だが、Saposnik氏らのもとではすでにその計画が進行中である。低コストで治療効果の向上が望めるこの技術の有用性が、大規模試験によって証明されることを期待したい。

(日経メディカル別冊編集)