米バージニア大学のShaneela Melik氏

 脳卒中急性期における血糖管理の重要性は多くの人の知るところであるが、慢性的な高血糖が脳卒中の予後に及ぼす影響についてはほとんど情報がない。こうした中、脳卒中急性期の至適血糖管理目標値を探る無作為化比較試験であるGRASP試験Glucose Regulation in Acute Stroke Patients Trial)を推進する米バージニア大学のShaneela Melik氏(写真)らは、同試験のパイロット試験のデータを利用し、HbA1cと脳卒中予後との関連についても解析を行った。その結果、慢性的な高血糖は予後不良に導く要因であるとの可能性が示唆されたが、統計的有意性は検出できなかった。2月24日から26日まで米サンアントニオで開催されている国際脳卒中学会ISC2010)において報告した。

 GRASP試験は、急性脳卒中発症時に高血糖であった患者を対象に、厳格な血糖管理と通常の血糖管理、緩やかな血糖管理という3つの血糖管理戦略の効果と安全性を比較する無作為化比較試験である。そのパイロット試験には74例が登録。うち、ベースライン時のHbA1c値と3カ月後のmodified Rankin Score(mRS;脳卒中後の障害程度の指標)のデータを備えた73例が今回の解析の対象となった。

 Melik氏らは、まず、これらの患者をベースライン時のHbA1c値によって、(1)正常HbA1c群(<7%)、(2)高HbA1c群(7.0〜9.9%)、(3)著明な高HbA1c群(≧10%)の3グループに分類。その結果、各群の患者数はそれぞれ39人、24人、10人であり、半数近く(47%)の患者が慢性的な高血糖状態にあったことが判明した。

 また、これらの患者のうち、3カ月後のmRSが0(まったくの無症候)もしくは1(症候はあっても明らかな障害はない)であった患者の割合は、正常HbA1c群で41%だったのに対し、高HbA1c群では25%、著明な高HbA1c群では30%にとどまった。

 続いて同氏らは、NIH Stroke Scale(NIHSS;脳卒中重症度の指標)、tPA治療、高HbA1c、著明な高HbA1cの4つの因子を独立因子とし、脳卒中予後を従属因子とする多変量ロジスティック回帰分析を行った。その結果、NIHSSは予後不良の独立した有意な予測因子として同定された(オッズ比0.85、95%信頼区間;0.76-0.95、p=0.004)。だが、tPA治療による予後への影響は認められなかった(オッズ比0.99、95%信頼区間;0.32-3.09、p=0.99)。

 高HbA1cおよび著明な高HbA1cは、いずれもオッズ比を大きく低下させ、不良な予後との関連がうかがわれたが、統計的有意性は認められなかった(高HbA1c:オッズ比0.36、95%信頼区間;0.10-1.26、p=0.11、著明な高HbA1c:オッズ比0.54、95%信頼区間;0.11-2.63、p=0.45)。

 しかしながら、本検討は少数例でなされたパイロット試験データを用いた解析であることから、高HbA1cと予後との間に有意な相関が認められなかったことは、両者の相関を否定するものではなく、検出力不足に基づくいわゆる「タイプIIエラー」であった可能性が高いという。このためMelik氏らは、「両者の関連を明らかにするためには、より大きな集団での解析が必要だ」と述べている。

(日経メディカル別冊編集)