九州大学病院の吉村壮平氏

 広範囲の検査にも関わらず、何パーセントかの脳卒中患者では脳梗塞の明らかな原因が特定できない。この種の脳卒中を原因不明脳梗塞CI)と呼んでいるが、悪性腫瘍歴がある割合が高いなど、その臨床的特徴の一端が明らかになった。脳卒中の多施設共同研究を行う福岡脳卒中データベース研究(FSRFukuoka Stroke Registry)の成果で、九州大学病院の吉村壮平氏(写真)らが2月24日から26日まで米サンアントニオで開催される国際脳卒中学会ISC2010)で発表した。

 演者らは、CIの背景と臨床的な特徴を明らかにするため、前向き多施設の脳卒中試験であるFSRを用いた。FSRには、2007年6月から2009年8月の間に急性脳梗塞の患者1895人が連続して登録された。CI群(117人、男性47%、平均年齢70.9±13.9歳)と脳梗塞の原因が分かっている群(1778人、男性61.3%、平均年齢72.0±11.7歳)との間で患者の背景、共存疾患、臨床所見、臨床検査データ、治療および予後について比較した。

 その結果、CI群では原因の分かっている群に比べて女性の割合が高く、悪性腫瘍歴も多い(23.1%対12.0%、p<0.001)という特徴が分かった。CI群では赤血球数、血清総タンパク質および中性脂肪濃度が低かったほか、喫煙、高血圧、糖尿病などの割合も低かった。ただし、入院時のNIHSSスコアには両群間で有意な差はなかった。

 多重ロジスティック回帰分析を行ったところ、年齢(オッズ比;0.975、p=0.002)、悪性腫瘍歴(オッズ比;2.275、p<0.001)、喫煙(オッズ比;0.605、p=0.042)、ヘモグロビン値(オッズ比;0.895、p=0.041)およびHbA1c値(オッズ比;0.751、p=0.008)などがCIと有意に関係していることが明らかになった。

 演者らは、「CI患者は脳梗塞の原因が分かっている患者に比べて若く、悪性腫瘍歴がある割合が高い」という特徴が明らかになったと結論。その上で、「脳梗塞の明らかな原因が不明の比較的若い患者を検査する際には、悪性腫瘍症状があるかどうかを診る必要がある」などと考察した。

(日経メディカル別冊編集)