WASID(Warfarin Aspirin Symptomatic Intracranial Disease)研究は、症候性の頭蓋内動脈狭窄患者569例を対象にアスピリンとワーファリンの脳・心イベント抑制効果を比較したトライアルである。その主成績は昨年発表され、ワーファリンの有効性がアスピリンをしのぐものでないことが示されたが、本学会ではEmory UniversityのSalina Waddy氏(米国)がWASIDの対象患者における心血管病危険因子とその治療の人種による違いについて解析した成績を報告し、この種の臨床試験においては、危険因子の頻度とその管理状況を考慮したプロトコールが必要と述べた。

 この研究では、治療可能な心血管病危険因子(高血圧、喫煙、高コレステロール血症)の頻度とそれらの管理状況を白人と黒人の間で比較した。調査時期は試験開始時と試験開始1年後、解析対象例数は次のとおりである。1)高血圧:白人208例、黒人101例、2)喫煙:白人221例、黒人105例、3)高コレステロール血症:白人166例、黒人75例。

 試験開始時における高血圧の頻度は白人85%、黒人95%、降圧薬服用率は白人68%、黒人81%であり、いずれも黒人で有意に高かったが、血圧管理が不十分なもの(140/90mmHg以上)の頻度は白人51%、黒人54%とほぼ同等であり、有意差は認められなかった。試験開始1年後の降圧薬服用率は白人76%、黒人89%であり両群とも試験開始時に比べ有意に上昇したが、降圧目標未達成率は白人49%、黒人52%であり、両群とも有意な改善を示さなかった。

 試験開始時の喫煙率は白人19%、黒人29%であり、後者で有意に高かったが、1年後にはそれぞれ15%、22%に低下、群間差が減少して有意差は消失した。ただし、1年間における喫煙率の低下は両群とも有意ではなかった。

 試験開始時の高コレステロール血症(総コレステロール値が200mg/dLを超えるもの)の頻度は白人46%、黒人57%であり、両群間に有意差は認められなかったが、1年後の頻度はそれぞれ36%、45%と白人のみが有意な低下を示し、黒人との比較でも有意差を生じた。高コレステロール血症の治療状況を評価する指標としてスタチンの服薬率とその変化を調べたところ、白人の服薬率は試験開始時61%から1年後76%へと著明に上昇したが、黒人のそれは試験開始時57%、1年後59%と変化はごくわずかであった。

 Waddy氏は以上の成績に加えて、黒人における1次エンドポイント(脳卒中と血管死)の相対リスクが白人の1.49倍と有意に高かったことを明らかにし、高血圧治療、禁煙対策のさらなる強化が求められるとともに、人種間にみられるスタチン治療の頻度差を抑制する対策が必要であり、実地診療はもちろん、臨床試験でもこのような治療格差を放置すべきではないと強調した。