動脈硬化性疾患の発症・進展には血管内皮障害が関与するといわれるが、2月17日午前に開かれたシンポジウム「脳卒中における血管内皮障害と血管保護」では米University of IowaのFrank M. Faraci氏が、脳血管内皮障害に酸化ストレスが大きな役割を演じていること、とくに脳血管は他臓器の血管に比べ酸化ストレスによる障害を来たしやすいことなどを明らかにした。

 Faraci氏はまず心血管病モデル動物の成績を示した。レニン-アンジオテンシン系を過剰発現する高血圧マウス、肥満型糖尿病モデルであるdb/dbマウス、活性酸素除去物質SODが欠損したマウスでは、いずれも脳血管組織でアンジオテンシンII刺激による活性酸素スーパーオキシドの発現が亢進し、同時にアセチルコリン刺激による内皮依存性血管拡張反応が有意に低下する。また、SOD欠損マウスでは血管内皮機能の低下にともない、血管壁が著明に肥厚することも明らかになっている。

 臨床的には加齢、高血圧、糖尿病、インスリン抵抗性、高ホモシステイン血症、SOD欠損、食事依存性肥満、アルツハイマー病、レニン-アンジオテンシン系亢進、ニコチン摂取、アルコール摂取などが動脈硬化性疾患の危険因子として知られるが、これらが存在すると脳血管における酸化ストレスが亢進することも報告されている。

 これらの知見は酸化ストレスに起因する血管内皮障害が全身臓器の血管に病的影響を及ぼすことを示唆するが、Faraci氏は、酸化ストレスの影響は特に脳血管において顕著であると述べ、その根拠として、脳血管と他臓器血管の酸化ストレスに対する反応を比較した実験データを示した。スーパーオキシドはNAD(P)Hオキシダーゼの作用によりつくられるが、アンジオテンシンII刺激によるNAD(P)Hオキシダーゼの発現亢進は大動脈や冠動脈などに比べ脳底動脈で著明に高度である。また、アンジオテンシンIIは内皮依存性血管拡張反応を低下させるが、その程度も脳底動脈が有意に大である。加齢に伴う内皮依存性血管拡張反応の低下も頭蓋内動脈が頸動脈に比べ有意に高度であることが明らかになっている。

 脳血管がなぜ酸化ストレスにより障害を来たしやすいかは、まだわかっていないが、Faraci氏はペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ(PPARγ)の変異が関係している可能性を示唆した。PPARγは脂肪細胞分化に関与する転写因子であり、インスリン抵抗性改善作用が知られているが、最近の研究からエンドセリン-1、誘導型一酸化窒素合成酵素(iNOS)、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)、細胞接着因子、炎症などを抑制することが明らかになっている。Faraci氏はこのPPARγ遺伝子の特定部位の変異が血管内皮障害に関与するという成績を示し、この変異が酸化ストレスに対する脳血管の易障害性にどのようにかかわっているかを解明することが課題だと述べた。