末梢血管障害(PAD)は全身の動脈硬化症と並行して進行し、それ自体、血管イベントの危険因子であるといわれる。しかし、血管イベントのなかでも脳卒中については、PADが脳卒中のリスクを高めるとする疫学成績がある一方、PADが有意な危険因子とは認められないとする成績もあり、脳卒中リスクに及ぼすPADの影響については、まだ確たる結論が得られていない。本学会では、大規模な前向き観察研究getABI(German Epidemiological Trial on Ankle Brachial Index)の成績が発表され、PADが脳卒中死の有意な危険因子であることが明らかになった。Municipal Hospital of Munich-HarlachingのR.Habert氏(ドイツ)がポスターセッションで報告した。
 
 研究対象はドイツ国内344のプライマリケア施設を受診した65歳以上の高齢者6880人(平均72.5歳)である。PADの診断はドップラー法により測定されるABI(Ankle Brachial Pressure Index:上腕血圧/足関節血圧比)により、ABIが0.9未満のものをPADと判定した。この方法により被験者をPAD群と非PAD群に分けて予後を3年間追跡、両群の血管イベント発生率を比較した。

 3年の観察期間を通じて94%の被験者が受診を継続した。生存に関する情報が捕捉できなかった被験者は1人だけであった。観察開始時にPADと診断されたものは全被験者の18%、間欠性跛行が認められたものは2.8%、PADに起因する下肢切断術または血行再建術の既往を有するものは2.3%であった。

 観察期間における両群の死亡率とイベント発生率を原因別に示す(表)。

 狭心症を除くすべての致死性・非致死性イベントについて両群間に有意差が認められた。PAD群のハザード比は全脳卒中死では2.2(95%信頼区間1.0-4.8)、虚血性脳卒中死では3.2(95%信頼区間1.1-9.5)であった。

 上記の成績は、PADが全原因死、脳卒中死のリスクを有意に高めること、なかでも虚血性脳卒中死に対してはきわめて強力な危険因子であることを明らかにした。また、この研究ではABIと脳卒中死の関係についても解析が行われたが、ABIが低いほどリスクが上昇することも明らかになった。Habert氏はこれらの成績に基づき、高齢者に対してはPADのスクリーニングを実施することが望ましく、ABIが診断指標として有用であると述べた。