インスリン導入から間もない2型糖尿病患者では、血糖コントロールに難渋することが多いが、その理由は定かでない。英国・ニューキャッスル大学のP. Home氏は、新たに開始された大規模国際研究・CREDIT試験の登録患者の基礎データを整理する中で、血糖コントロール不良と相関する背景因子を模索。その結果、空腹時血糖値(FBG)や年齢といったある程度予想された因子と並び、「地域」という新たな要素が浮上したことを報告した。

 CREDIT(the Cardiovascular Risk Evaluation in people with Type 2 Diabetes mellitus on Insulin Therapy)試験は、インスリン導入がreal-worldの 2型糖尿病患者の心血管イベント発症率に及ぼす影響を検討する大規模観察研究であり、北米と欧州、アジアの13カ国の314施設で、インスリン導入から6カ月以内の2型糖尿病患者3,031例に対し、4年間の追跡がなされる予定である。

 血糖コントロール不良をもたらす原因を探るためには、多彩な背景因子をもつ血糖コントロール不良例を数多く集め、コントロール良好例との比較を行うことが必要となる。そうした中で、コントロール不良を生じることが多いインスリン導入早期患者を対象とした国際的な大規模研究は、絶好の検討機会を与えるものである。

 今回の解析がなされた登録患者数は、男性1501例、女性1452例の計2953例。平均年齢は61.4±10.2歳、2型糖尿病の平均罹病期間は10.6±7.7年だった。また、FBGは97.2±30.6mg/dL、HbA1c値は9.5±2.0%であり、8.5%以下の患者の割合は34.7%にすぎなかった。

 Home氏らは、患者をHbA1c値>8.5%のグループ(n=1928)とHbA1c値≦8.5%のグループ(n=1025)に分け、両群の背景因子を比較した。その結果、>8.5%群では≦8.5%群に比して、年齢が若く(60.5歳 対 63.1歳、p<0.001)、BMIが低く(29.1/m2 対 29.7/m2、p=0.013)、FBGが高く(106.2mg/dL 対 81.0mg/dL、p<0.001)、糖尿病性網膜症と神経障害の頻度が高く(網膜症:35.3% 対 27.7%、神経障害:41.4% 対 32.8%、ともにp<0.001)、高血圧の有病率が低い(67.8% 対 71.3%、p=0.047)という違いが見られた。

 これに加え、>8.5%群および≦8.5%群の患者の割合には地域による偏りが大きいことも明らかとなった(p<0.001)。たとえば、>8.5%群の患者の割合は、最も高い東欧で27.6%、最も低い北米で6.4%、≦8.5%群の患者の割合は、最も高い南欧で23.0%、最も低い日本で9.3%であった。

 これらの因子を独立変数とした多変量解析の結果、血糖コントロール不良(HbA1c値>8.5%)との独立した相関が認められた因子は、年齢、FBG、そして地域であった。年齢が10歳増えることによるオッズ比(OR)は0.86(95%信頼区間:0.78 - 0.95、p=0.003)、FBG 18mg/dLの増加に伴うORは1.33(同:1.29 - 1.38、p=0.000)だった。また、地域による違いでは、フランスに対する日本のORがもっとも高く、3.43(同:2.24 - 5.23、p=0.000)であった。

 以上の結果から、インスリン導入から間もない2型糖尿病患者の血糖コントロール不良につながる要因には、FBGや年齢に加えて、「地域」という要素があり、特に日本では欧米に比してコントロール不良を呈するリスクが高いことが示唆された。その理由の解明には今後の検討を待たねばならないが、わが国では欧米に比較してインスリン治療に対する抵抗感が強く、導入が遅れがちになるなど、治療に対する意識の違いが影響しているのかもしれない。

(日経メディカル別冊編集)