台北・Veterans General HospitalのShih-Tzer Tsai氏らは、インド、中国、台湾、タイ、韓国などアジア地域11カ国における2型糖尿病患者を対象とした研究から、経口血糖降下薬による治療において血糖コントロール不十分な患者に対する基礎インスリン治療の有用性と安全性について、カナダ・モントリオールで開催されている第20回世界糖尿病会議において報告した。

 研究対象は、アジア地域11カ国における20歳以上の2型糖尿病患者で、経口血糖降下薬(OAD)で血糖コントロールが不十分(HbA1c値:8.0%以上)であり、担当医の判断でインスリン治療を開始することとなった2921人である。男性1452人、女性1469人。平均56.42歳で、糖尿病罹病期間は平均9.29年、OAD投与期間は平均8.69年であり、HbA1c値9.84%、空腹時血糖値は211mg/dLと血糖コントロールは不十分であった。

 医師の判断により処方されたインスリン製剤は、インスリングラルギンが2016例と多く、次いで中間型(NPH)インスリンが589例、インスリンデテミルが61例、その他(混合型など)が13例であった。実地臨床における検討であるために各群の患者数には大きなばらつきがあるが、患者背景を比較すると、性別と年齢については、各インスリン群間に差は認められなかった。

 ただし、グラルギン群は、NPHインスリン群に比べて、有意に高齢、高体重、BMI高値、高血圧、糖尿病罹病期間およびOAD投与期間が長かった。また、HbA1c値も有意に低値であった(グラルギン群9.7% 対 NPHインスリン群10.1%)。

 一方、デテミル群は、NPHインスリン群に比して、有意に糖尿病罹病期間およびOAD投与期間が長かったが、その他の背景因子に有意差は認められなかった。OAD投与は医師の判断により継続したが、スクリーニング時に全体の80.8%だったOAD使用の割合は、インスリン治療開始後は68.9%に減少していた。

 各基礎インスリン治療開始から6カ月後の血糖コントロールを検討した結果、グラルギン群が平均HbA1c値7.6%(ベースラインからの低下幅:-2.1ポイント)、デテミル群が9.1%(同:-0.8ポイント)、NPHインスリン群が8.0%(同:-1.9ポイント)であり、グラルギン群は、デテミル群に比べて有意な改善を示した。

 空腹時血糖値については、グラルギン群が平均126mg/dL(ベースラインからの低下幅:-84ポイント)、デテミル群が162mg/dL(同:-51ポイント)、NPHインスリン群が136mg/dL(同:-75ポイント)となり、グラルギン群およびNPHインスリン群は、デテミル群に比べて有意な改善を示した。

 インスリン治療による体重変化はほとんどなく(補正後:±0.01〜0.13kg)、各群間に差はみとめられなかった。また、低血糖の発生は、グラルギン群が5.7%、デテミル群が13.1%、NPHインスリン群が14.6%であり、NPHインスリン群に比べてグラルギン群では、有意に低頻度であった。

 インスリン治療に伴う副作用は全例中407例(13.9%)において報告されたが、多くは低血糖であり、重篤な副作用は報告されなかった。各群における副作用発生頻度は、グラルギン群で11.1%、デテミル群で17.3%、NPHインスリン群で23.1%だった。

 以上の結果から、Tsai氏らは「OADにて血糖コントロールが不十分なアジア人の2型糖尿病患者において、基礎インスリン治療の導入は著明な血糖値の改善を示し、安全性も良好である」と結論するとともに、「しかし、今回の実地臨床における調査から、OAD投与期間が長いにも関わらず血糖コントロールが不十分な患者が多いことがうかがわれ、これらの患者においては適切かつ早期にインスリン治療を開始すべきである」と、アジア地域における糖尿病治療の問題点を指摘した。

(日経メディカル別冊編集)