インスリン治療2型糖尿病患者心血管イベントを抑制しうるか否か――。その答えを求め、新たな大規模国際研究・CREDIT試験が開始された。その本格始動に先立ち、米国・Ochsner Medical CenterのL. Blonde氏らは、同研究の登録患者3031人の背景因子を解析し、real-worldのインスリン導入2型糖尿病患者における心血管疾患とその危険因子の存在状況を俯瞰した。10月18日から22日にかけてカナダ・モントリオールで開催されている第20回世界糖尿病会議における報告である。

 昨年の欧州糖尿病学会(EASD)にて報告されたUKPDS試験後の10年間のフォローアップデータにより、早期からの厳格な血糖コントロールは、細小血管障害のみならず大血管障害の抑制にもつながることが世に示されたことは記憶に新しい。しかし、UKPDSでは「厳格な血糖コントロール」のための介入方法は限定されていないため、インスリンをはじめとする個々の血糖降下薬の大血管障害予防効果はいまだ明確にされていない。

 そこでBlonde氏らは、日本を含む世界13カ国、314施設の参加のもと、インスリン導入に伴う2型糖尿病患者の心血管イベントリスクへの影響をreal-worldで追跡する大規模観察研究CREDIT(the Cardiovascular Risk Evaluation in people with Type 2 Diabetes mellitus on Insulin Therapy)試験の実施を計画した。

 対象は、40歳以上で罹病歴1年以上、インスリン導入から1〜6カ月の2型糖尿病患者であり、追跡期間は4年の予定である。主要評価項目は、心血管死亡と非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合エンドポイントとされた。また、予想されるイベント発症率や脱落率などから、登録患者数の目標は3000例以上に設定された。

 今回の解析までに登録された患者数は、男性1546例、女性1485例の計3031例(平均年齢:61.3±10.3歳)。2型糖尿病の平均罹病期間は10.6±7.8年、HbA1cの平均値は9.5±2.0%、空腹時血糖の平均値は209±67mg/dLであり、罹病期間が長く、血糖コントロールが不良な患者像が描かれた。

 糖尿病性細小血管障害の有病率は、腎症が57.1%、末梢神経障害が38.2%、網膜症が32.4%、足病変が2.8%であった。一方、大血管障害の合併も安定狭心症(13.1%)や末梢血管障害(10.6%)、心筋梗塞(10.3%)などを中心に高率に認められ、大血管障害全体の有病率は34.1%に及んだ。

 また、喫煙歴や糖尿病の家族歴をもつ患者、身体活動性の低い患者が約半数を占める(それぞれ44.3%、51.9%、52.9%)など、心血管危険因子を有する患者が多く認められた。

 次に、これらの患者を大血管障害のない患者(グループ1)と1つの大血管障害を持つ患者(グループ2)、2つ以上の大血管障害をもつ患者(グループ3)と3群に分けると、多くの危険因子はグループ1で最も少なく、グループ3で最も多くなる傾向にあった。

 しかし、大方の予想を裏切り、HbA1cはグループ1が9.6±2.0%と最も高く、グループ2で9.5±1.9%、グループ3で9.3±1.8%となったという。その理由の解明を含め、こうしたベースライン時の状況が4年後にどう変わるのか、CREDIT試験の行方に期待したい。

(日経メディカル別冊編集)