欧米の糖尿病治療ガイドラインは、インスリン治療を開始する際には、血糖コントロールの治療目標を個別に設定し、どの治療レジメンを用いて、どのように開始するかが課題であるとしている。カナダ・モントリオールで開催されている第20回世界糖尿病会議において、ヘルシンキ大学のHannele Yki-Jarvinen氏が、こうした課題を克服する上で、遺伝子組換え持効型インスリン製剤であるインスリングラルギンが有用であることを概説した。

 ADA/ACC/AHAの治療ガイドラインでは、糖尿病治療の目標を、著しい低血糖や有害事象を伴わずにHbA1c7%未満を達成することだとしている。罹病期間の短い患者や生命予後が長いと思われる患者、特筆すべき心血管疾患を伴わない患者では、7%未満が治療目標となる。一方、重篤な低血糖の経験例、生命予後の短いと思われる患者、細小血管および大血管合併症が進行している患者、合併症を伴う患者、罹病期間の長い患者では治療目標は7%を超えたレベルに設定される。

 ADA、EASDによる糖尿病の標準的な治療アルゴリズムでは、まず生活習慣の修正とメトホルミン投与を行い、6カ月後に治療目標を達成しなかった場合には、SU薬とメトホルミンを併用、あるいは基礎インスリンとメトホルミンを併用する。

 2型糖尿病患者を対象としたTreat to Target試験では、遺伝子組換え型持効型インスリン製剤であるインスリングラルギン(以下、グラルギン)と中間型(NPH)インスリンによる血糖コントロールには差が認められないが、低血糖の発現頻度はNPH製剤の方が高く、それは夜間に顕著であることが示された。

 一方、インスリン治療の導入期にグループ指導を行うことの有用性も検討されている。INITIATE試験では個別指導群とグループ指導群で、その治療効果を検討している。結果として、HbA1c値、空腹時血糖値、インスリン用量に差は認められなかったが、医療機関受診や問い合わせに要した時間が約半分に低下した。

 また、グラルギンの1日1回投与と、同様に遺伝子組換え持効型インスリン製剤であるインスリンデテミル(以下、デテミル)の1日2回投与を比較したL2T3試験がある。グラルギン群ではインスリン投与量が約40%少なかったが、HbA1c値は同等であった。また、デテミル群では昼間の低血糖の発現頻度が高かったが、体重の増加量はグラルギン群の方が大きかった。なお、治療満足度は1日1回投与のグラルギン群で良好であった。

 以上の検討から、インスリン治療の導入にあたっては、その有効性と安全性を考慮した上で、個々の患者に適した用量、患者指導が求められることが、示されている。インスリン導入にあたり、インスリングラルギンはより少ない投与量で治療目標を達成できる可能性がある。また、患者QOLの観点からも有用であると考えられる。

(日経メディカル別冊編集)