オーストリア・ウィーン医科大学のJosef Smolen氏

 6月12日から15日にマドリッドで開催された欧州リウマチ学会(EULAR2013)の最終日、関節リウマチ(RA)治療リコメンデーションの新版「EULAR Recommendations for the management of Rheumatoid Arthritis 2013 update」のドラフト版が発表された。現行の2010年版と基本的な枠組みは変わらないが、TNF阻害薬以外の製剤を含む現行の生物学的製剤をすべて同列に位置付けたこと、ヤヌスキナーゼ阻害薬のトファシチニブとバイオ後発品(バイオシミラー)を治療選択肢の1つとして取り上げたことが大きな特徴だ。

 まず3人の若手研究者が、(1)合成抗リウマチ薬、トファシチニブ、ステロイド、(2)バイオ後発品を含む生物学的製剤、(3)治療の安全性−−の3分野について、系統的文献検索の結果を報告。引き続き、オーストリア・ウィーン医科大学のJosef Smolen氏が、新リコメンデーションのドラフト(草稿)を提示した。

 2013年版は3つの原則と14のリコメンデーションから成る。3原則の概要は、(A)リウマチ医と患者は共同で治療に関する意思決定をすべき、(B)RA患者の治療はリウマチ医が主導すべき、(C)リウマチ医はRA治療が高コストであることを考慮すべき、というもの。この3原則は、2010年版とほぼ同内容だが、(A)(B)の順序が逆になり、患者と医師の連携をさらに強調した形だ。

 14のリコメンデーションのうち、最初の3項目は治療戦略に関する項目で、(1)早期治療開始、(2)寛解を目指した治療、(3)治療応答が不十分なら速やかに(3〜6カ月)治療方針を変更する、というものだ。

 4番目以降は具体的な治療方針について示しており、メトトレキサート(MTX)を含む抗リウマチ薬の投与、ステロイド投与とその減量、抗リウマチ薬から生物学的製剤、あるいは生物学的製剤間の切り替え、寛解持続を達成した場合の生物学的製剤や抗リウマチ薬の減量、合併症や有害事象がある場合の治療調整などに言及している。

 2010年版からの重要な変更点は、生物学的製剤における“TNF阻害薬ファースト”を廃したことだろう。抗リウマチ薬から生物学的製剤への切り替えの際、2010年版では、まずTNF阻害薬+MTX併用で開始すべきとしていたが、2013年版では、現行の生物学的製剤はいずれも類似の有効性と安全性があるとして、同列の扱いになった。また、生物学的製剤は全てMTXとの併用で開始すべきとされた。

 抗リウマチ薬未治療のRA患者に対する治療は、2010年版と同じく既存の抗リウマチ薬を初期治療薬(ファーストライン)とし、生物学的製剤は2次治療薬(セカンドライン)と位置付けている。これについてSmolen氏は、目標を設定した治療戦略(treat-to-target)で、既存の抗リウマチ薬は生物学的製剤と同様の有効性があること、早期RA患者に対する過剰治療を避けるべきであること、などを理由に挙げた。

 また、1剤目の生物学的製剤に不応・不耐の場合、別の生物学的製剤への切り替えと共に、トファシチニブまたはバイオ後続品への切り替えを選択肢とした。ただし、本リコメンデーションのドラフトが決定した直後に、欧州医薬品庁(EMA)がトファシチニブ承認に否定的見解を公表しており、今後の情勢によっては記載変更もあり得るという。

 EULARの3年ぶりのRA治療リコメンデーション改訂とあって、最終日の昼すぎという時間帯にもかかわらず、会場には多くの参加者が詰めかけた。Smolen氏は、「RAリコメンデーション2013の作成委員会には、現行版の作成メンバーを含む33人が参加した。その中には、感染症の専門家1人、医療経済学者1人、患者代表者3人も加わった」と述べ、新リコメンデーションが、より幅広い見地から策定されたことを明らかにした。同氏は、「本日報告したドラフトは今後の討議で変更される可能性があることに注意してほしい」と締めくくった。