英国Roche社 のLaura Pitts氏

 抗IL-6受容体抗体薬のトシリズマブ(TCZ)は長期に使用しても、有害事象が特に増えることはなく、また死亡心血管イベント胃腸穿孔悪性腫瘍の発生率も使用期間によらず大きく変動しないことが分かった。これらはTCZに関する試験データのプール解析によって得られた結果で、英国Roche社 のLaura Pitts氏らが6月12日から15日までマドリッドで開催されていた欧州リウマチ学会(EULAR2013)で発表した。

 本解析の対象とした試験は、TCZのプラセボ対照の第3相試験であるOPTION、 TOWARD、RADIATE、AMBITION、LITHE、オープンラベルの長期延長試験であるGROWTH95、GROWTH96、LITHE延長試験、TCZとアダリムマブ(ADA)の単剤投与の有効性を直接比較したADACTAの9つ。

 解析対象は、いずれかの試験でTCZ 4mg/kgまたは8mg/kgを1回以上投与された中等度から重症のRA患者4171例。TCZ単独投与例だけでなく、メトトレキサート(MTX)や抗リウマチ薬(DMARD)の併用例、DMARDやTNF阻害薬の効果不十分例、MTX未使用例など、様々なタイプの患者が含まれていた。

 対象患者におけるTCZの投与期間は平均3.9年、中央値5.1(範囲:0.0〜6.8)年で、女性が81.9%、白人が74.7%を占め、年齢は平均52.1歳。総観察期間は1万6205人・年だった。ベースラインのDAS28の中央値は6.54、RA罹病期間の中央値は6.78年、経口ステロイド薬は57.7%が使用していた。

 解析期間は、各患者の投与開始日から2012年5月2日までとした。その間に1577例(37.8%)が脱落し、そのうち、有害事象によるものが725例(17.4%)、死亡が71例(1.7%)だった。一方、5年間治療を継続できた患者は2019例(48.4%)だった。

 有害事象の発生数は100人・年当たり296.0で、有害事象による脱落数は同4.9だった。その脱落数を投与期間別に見ると、治療開始6カ月後までが同11.7と最も多く、7〜12カ月後は同6.8と減少し、それ以降はさらに減少し同3〜4前後で推移した。有害事象の内訳については、感染症が同0.97、肝機能を中心とする臨床検査値異常が同0.87、良性および悪性の腫瘍が同0.77などだった。

 重大な有害事象の発生は100人・年当たり14.4だったが、TCZの継続使用に伴い増えることはなかった。内訳を見ると、感染症が同4.4と最も多かった。

 全死亡は100人・年当たり0.58、TCZ投与患者の標準化死亡比は0.91で、米国の一般人における死亡状況と同様だった。心血管イベントについては、心筋梗塞が100人・年当たり0.27、虚血性、出血性、一過性虚血発作を合わせた脳卒中が同0.32で、いずれも発生率は解析期間全体では大きな変化なく推移していた。

 その他、胃腸穿孔の発生数は100人・年当たり0.20で、経口ステロイド薬の使用の有無で分けて見ると、使用者では同0.25、非使用者では同0.10だった。また、悪性腫瘍の発生数は同1.26、標準化罹患比は1.16で米国における一般人の罹患率と同等だった。これらも使用期間によらず大きな変動はなかった。

 こうした結果をPitts氏は、「TCZ治療中における最も多い重大な有害事象は感染症だった。心筋梗塞や脳卒中の発生率は他のRAコホートの疫学データと同程度であり、胃腸穿孔もステロイド薬の使用にかかわらず他の生物学的製剤と一致していた。悪性腫瘍は米国の一般人と有意な差はなかった」とまとめ、「今回示されたTCZの安全性プロファイルはこれまでの報告と一致しており、平均3.9年間の追跡期間中において変化はなかった」と結語した。