東京医科歯科大学の針谷正祥氏

 日本のリアルワールドにおける抗IL-6受容体抗体薬トシリズマブ(TCZ)の安全性と有効性について、市販後に全例を対象に実施した特定使用成績調査の結果を基に、東京医科歯科大学の針谷正祥氏らが6月12日から15日までマドリッドで開催されていた欧州リウマチ学会(EULAR2013)で報告した。同調査の中間解析結果(3881例)は2011年に論文掲載されているが、今回、全患者7901例を対象とした解析結果が示され、死亡状況は東京女子医科大学の関節リウマチ(RA)コホートであるIORRAのデータと変わらないことなどが明らかになった。

 登録期間は2008年4月から2010年8月までで、その間にTCZが投与された全RA患者を登録。これらの患者にはTCZ 8mg/kgを4週間隔で点滴静注し、28週間経過を追跡した。

 ベースラインの年齢は58.7歳、そのうち70歳以上が20.7%を占め、女性比率は81.6%、体重は53.3kgで、そのうち40kg未満は5.4%だった。RA罹病期間は10.4年で、そのうち10年以上は37.6%で、Steinbrockerクラス分類が3または4が26.1%、同ステージ分類がIIIまたはIVが64.7%だった。前治療における抗TNF製剤使用率は62.8%、ベースラインにおける抗リウマチ薬(DMARD)使用率は72.4%、メトトレキサート(MTX)使用率は55.8%、ステロイド薬使用率は74.0%だった。

 調査期間中に3468例(43.9%)の患者から6460件の有害事象が報告された。最も多かったのは臨床検査値異常で、以下、感染症・寄生虫症肝胆汁性疾患代謝・栄養障害と続いた。重篤な有害事象は762例(9.6%)から1050件の報告があり、最も多かったのは感染症・寄生虫症だった。これらは中間解析の時と同様の傾向だった。35例が死亡したが、標準化死亡比は1.15(95%信頼区間[CI]:0.83-1.61)であり、国内のRAコホートであるIORRAのデータと変わるものではなかった。

 多変量ロジスティック回帰分析により、重篤な感染症発現のリスク因子として、年齢65歳以上(オッズ比[OR]:1.536)、RA罹病期間10年以上(OR:1.791)、呼吸器疾患の既往・合併(OR:1.932)、ステロイド薬5mg/日(プレドニゾロン換算)超の使用(OR:2.791)が抽出された。

これら4つのリスク因子の保有数別に、28週後の重篤な感染症の累積発症率を求めると、リスク因子が0因子(1975例)は1.2%、1因子(2931例)は3.0%、2因子(2120例)は5.2%、3因子以上(875例)は11.2%と、保有数が増えるにつれ高率になった。

 一方、有効性について、項目別にベースラインと28週後の値を見ると、腫脹関節数(SJC)は7.1から2.8に、圧痛関節数(TJC)は7.6から3.1に、患者全般評価VASは56.3mmから31.5mmに、CRPは2.86mg/dLから0.54mg/dLに、それぞれ有意に低下した。米国リウマチ学会(ACR)/欧州リウマチ学会(EULAR)のBoolean基準による寛解率は15.1%(評価可能だった5904例中894例)だった。

 多変量ロジスティック回帰分析によりBoolean基準による寛解が得られやすい予測因子として、体重40kg以上(OR:1.814)が抽出された。一方、得られにくい予測因子として、罹病期間10年以上(OR:0.610)、Steinbrockerクラス分類が3または4(OR:0.620)、同ステージ分類がIIIまたはIV(OR:0.729)、前治療における生物学的製剤の使用(OR:1剤が0.616、2剤が0.407)、ステロイド薬の使用(OR:5mg/日以下が0.678、5mg/日超が0.417)、非ステロイド抗炎症薬の使用(OR:0.692)、ベースラインにおけるDAS28-4/ESR(OR:1増加するごとに0.742)が抽出された。

 これらの解析結果から針谷氏は、「日本のリアルワールドにおいて、RA患者に対するTCZの安全性と有効性が示された。また、ベネフィット・リスク比を考慮すると、早期RAで生物学的製剤未使用例が、TCZの投薬候補として望ましいのではないか」と語った。