カナダUniversity of CalgaryのRanjani Somayaji氏

 関節リウマチ(RA)患者における関節手術では、免疫抑制剤の使用や合併症により術後感染症リスクがあることはよく知られている。また、強力にサイトカインやT細胞の働きを抑制する生物学的製剤が術後感染症にどの程度影響を与えているのかは未だに議論されているところである。今回、術後感染症と周術期の使用薬剤および合併症の関連を調べた新たな検討で、生物学的製剤使用は有意な危険因子としては同定されず、感染症の最も強力な危険因子は高用量ステロイドであることが示された。カナダUniversity of CalgaryのRanjani Somayaji氏らが、6月6日から9日にベルリンで開催された欧州リウマチ学会(EULAR2012)で報告した。

 研究グループは、Alberta Health Serviceのカルガリー地区データベースから、2000年1月〜2010年12月に、股関節または膝関節の全置換術を受けたRAまたは若年性特発性関節炎(JIA)の成人患者259人・381関節に対する手術のデータを抽出し、術後1年以内の感染症発症と、患者背景および薬物治療との関連を調べた。このとき生物学的製剤の投与により術後感染症リスクは上昇すると仮定した。

 患者背景は、71%が女性、平均年齢が63歳であり、高血圧43%、糖尿病10%、冠動脈疾患14%、慢性腎障害3%の合併症を有していた。薬物治療としては、2%がプレドニゾン換算で15mg/日超、27%が1〜15mg/日のステロイド薬を使用しており、生物学的製剤の使用は18%であった。

 全259例・381関節に対する手術における感染症発症件数は12件であり、そのうち手術部位感染症は7件だった。生物学的製剤使用例に対する手術70件における感染症の発症は2件であり、生物学的製剤を使用していないDMARD投与患者との比較において有意な相対リスク上昇は認められなかった(RR:0.90、95%信頼区間[CI]:0.25-3.26、P=0.8768)。

 一方、1〜15mg/日のステロイド薬使用者では手術106件中感染症は7件、15mg/日超の高用量ステロイド薬使用者では手術7件中感染症の発症を3件に認め、相対リスクは前者で2.03倍(P=0.0271)、後者では実に23.1倍(P<0.0001)だった。

 なお、一部のDMARD使用者でもわずかにリスク上昇を認めたものの、患者背景のリスク因子である喫煙、肥満、高血圧、冠動脈疾患、糖尿病については、いずれも有意なリスク上昇を認めなかった。

 以上のように、今回の検討では、生物学的製剤の使用による術後感染症リスクの有意な上昇は認められず、一方、ステロイド薬の使用はリスクを有意に押し上げることが示唆された。

 Somayaji氏は、本検討の限界として、サンプル数の不足やレトロスペクティブな解析であることを挙げたが、「その点を考慮しても高用量ステロイドによる23倍というリスク上昇は大きく、できるだけ用量を減らすように努めるべきではないか」と述べた。

(日経メディカル別冊編集)