富山大学の松下功氏

 関節リウマチRA)における股関節や膝関節などの関節破壊の進行を長期にわたって抑制するためには、Larsen grade 0またはIの段階から抗TNF療法などの対策を講じるべきであることを示唆する研究結果が示された。この段階なら90%以上の関節で進行を抑制できるが、grade IIになると抑制率は半減するという。富山大学の松下功氏らが、6月6日から9日にベルリンで開催された欧州リウマチ学会(EULAR2012)で報告した。

 これまでに松下氏らは、Larsen grade 0〜IIの関節破壊が生じている荷重関節でも、抗TNF療法により関節破壊の進行が少なくとも短期的には抑制できることを報告している。今回は最長7年の追跡を行い、長期的な関節破壊の抑制効果を検討した。

 対象は、同氏らの施設で抗TNF療法を行った中〜高疾患活動性のRA症例連続39例(うち女性34例)。ベースライン時の患者背景は、年齢が42〜75歳(中央値58歳)、罹病期間が0.5〜53年(中央値9年)、DAS28-ESRは3.7〜7.8(中央値5.7)であり、29例(74.4%)が高疾患活動性だった。

 松下氏らは、股関節と膝関節、および足関節と距骨下関節の2群に分けて評価を行った。今回の評価の対象は、生物学的製剤であるインフリキシマブ(30例)またはエタネルセプト(9例)で治療を開始した39例の関節のうち、股関節65、膝関節56、足関節73、距骨下関節57の計251関節とした。ベースライン時のLarsen gradeは、股関節と膝関節では0/Iが102関節、IIが10関節、III/IVが9関節であり、足関節と距骨下関節では0/Iが99関節、IIが14関節、III/IVが17関節だった。

 松下氏らは、これらの関節のX線所見変化についてLarsen法などを用いて平均4.5年(1〜7年)にわたって追跡し、Kaplan-Meier法により関節破壊進行抑制効果を評価した。評価の指標として、Larsen grade評価でグレード進行を認めない患者の割合(以下、関節破壊進行抑制率)が用いられた。

 その結果、股関節と膝関節における7年間の関節破壊進行抑制率は、ベースライン時Larsen gradeが0/Iの群では92.4%だったのに対し、gradeがIIの群では43.8%、III/IVの群では0%だった(0/I 対 II、0/I 対 III/IV、II 対 III/IVに有意差があり、いずれもP<0.001)。すなわち、Larsen gradeが0/Iなら、それ以上の関節破壊の進行をほぼ抑制できていたが、III/IVの関節では進行を抑制し得なかった。

 一方、足関節と距骨下関節の破壊についての関節破壊進行抑制率は、Larsen gradeが0/Iの群では89.7%、IIの群では53.6%、III/IVの群では70.1%であり、やはり0/Iの群が最も良好だった。0/I 対 IIと0/I 対 III/IVには有意差があったが(P<0.05)、IIとIII/IVの間に有意な差はなく、どの群も半数以上の関節で関節破壊の進行が抑制されていた。

 以上の結果より、高疾患活動性を有するRA患者に対する抗TNF療法によって、長期にわたって荷重関節における関節破壊進行抑制が可能であり、特に足関節と距骨下関節については、すでにLarsen grade III以上の破壊が進んでいても、関節破壊進行抑制が期待できる可能性が示唆された。

 しかし、股関節と膝関節については、関節破壊がすでに進行している場合、その後の破壊を抑えることは難しいことも明らかになった。

 以前の短期的な検討結果からは、Larsen grade IIの股関節と膝関節で関節破壊が抑止され得ると考えられたが、今回の長期的な検討では破壊の進行を認めた。この結果は、長期的に関節破壊の進行を抑え続けることが可能な“治療の窓(Window of opportunity)”は、従来考えられていたより狭いことを示唆していると言えそうだ。

 松下氏は、「股関節と膝関節の病変に関しては、早期からX線所見に十分な注意を払うべきだ」と述べ、関節破壊が著明に進行してしまう前に、より早期から抗TNF療法を開始するなど、荷重関節の破壊に対する対策を考慮する必要性を示唆した。

(日経メディカル別冊編集)