英国University College LondonのElena Nikiphorou氏

 関節リウマチ(RA)患者に対する整形外科手術を表す文言として、「手術は関節破壊のサロゲートマーカーである」とか、「内科的治療の奏功は手術のニーズに反映される」といったものがあることからも分かるように、内科的治療と外科的治療は密接に関係していると考えられている。実際に英国のRA患者コホート研究のデータをもとに、内科的治療の内容と関節手術の実施状況の変化をレトロスペクティブに解析した研究により、生物学的製剤が登場した2000年以降、整形外科手術のなかでも、特に中関節に対する手術が著明に減少していることが示された。英国University College LondonのElena Nikiphorou氏らが、6月6日から9日までベルリンで開催された欧州リウマチ学会(EULAR2012)で発表した。

 今回の検討は、英国のERAS(Early Rheumatoid Arthritis Study、登録開始年1986〜99年、n=1465)、およびERAN(Early Rheumatoid Arthritis Network、同2002〜11年、n=1236)という2つの研究に登録された患者データを解析したもの。両研究の患者背景は概ね同等であり、両者を統合することで、ほぼ四半世紀にわたるRA治療の動向を追うことが可能になった。

 Nikiphorou氏らは、登録時期によりERASコホートを3群(ERAS1群:1986〜89年登録、同2群:1990〜92年登録、同3群:1993〜99年登録)、ERANコホートを2群(ERAN1群:2002〜06年登録、同2群:2007〜11年登録)に分け、各群の患者に対して最初の3年間に行われた内科的治療内容を比較した。

 その結果、ERAS1群では、まずNSAID単剤で治療を開始し、効果不十分なら他のNSAIDまたはDMARDに切り替えるといった治療が7割強の患者に行われていたが、その割合は年々減少し、ERAN2群では45%程度になっていた。一方、ERAS1〜3群では5%に満たなかった複数DMARDs併用療法の比率が、ERAN2群では約2割を占めていた。また、ERAS時代にはなかった早期RA症例に対する抗TNF薬による治療例は、ERAN1〜2群では約5〜10%にみられた。

 次に、関節手術の施行頻度に目を向けると、ERASコホートでは最長25年の追跡期間中38%が、ERANコホートでは、最長9年の追跡中に17.5%が手術を受けていた。

 関節手術の中で、股関節全置換術や膝関節全置換術などの大関節手術の累積施行率は、ERAS1〜3群とERAN群 注) に有意な差は認められなかった。一方、手関節や足関節など中関節への手術の累積施行率は、ERAS1群、同2群、同3群、ERAN群と登録年代が進むにつれて低下し、ERAN群はERAS1群に対し、有意に施行率が低かった(P<0.0001)。

 こうした現象が認められた理由についてNikiphorou氏は、「早期診断と早期からの内科的介入により中小関節病変が重症化する症例は減少した。一方、大関節手術については、施行率が減少する要因だけではなく、手術手技などの進歩に伴って手術対象症例のハードルが低くなるなど、施行率を増加させる要因もあった」などと考察している。

 最後に同氏は、将来の関節手術リスクを早期に予測できる臨床的マーカーを検索した結果、最も強力な予測因子として低ヘモグロビン値が同定されたことを報告した。ベースライン時と登録1年時のヘモグロビンが低値だった場合、5年後、10年後に複数の関節で手術が必要になるリスクは、それぞれ2.6倍、3.0倍に高まるという。その機序は不明だが、興味深い知見と言えそうだ。

(日経メディカル別冊編集)

注)ERAN2群は登録から日が浅く追跡期間が短いため、関節手術の累積施行率の算出に際しては、ERAN1群と2群を合わせた「ERAN群」として解析している。