大阪大学免疫学フロンティア研究センターの菊田順一氏

 骨の破壊に関与する成熟破骨細胞には、「動いていて、骨吸収をしていない細胞」と、「動きがなく、今まさに骨吸収をしている細胞」の2種類があることが、大阪大学免疫学フロンティア研究センター石井優氏らの研究で、初めて明らかになった。また、破骨細胞分化因子(RANKL)は、骨吸収をしていない成熟破骨細胞に働きかけて、骨吸収をする細胞へと促すことも分かった。さらに、多くの自己免疫疾患の病態に関連していると考えられているTh17細胞は、その膜状に発現するRANKLを介して、成熟破骨細胞の骨吸収を促進することも示された。共同演者の菊田順一氏が、6月9日までベルリンで開催されていた欧州リウマチ学会(EULAR2012)でこれらの成果を発表した。

 菊田氏らは、二光子励起顕微鏡を用い、マウスを使って生きた状態の成熟破骨細胞の骨表面上での動きを観察した。同細胞の動きを可視化するために、破骨細胞表面から出るプロトンポンプと緑色蛍光タンパク質(GFP)を融合させた。

 すると、成熟破骨細胞の中には、あまり動かずに、骨表面に沿ってGFPでマークされたプロトンポンプが見えるものがあった。これは酸を分泌して骨を吸収している状態だと考えられた。一方で、別のタイプの成熟破骨細胞として、アメーバ状によく動きながら、GFPでマークされたプロトンポンプは骨表面には見られず、骨を吸収していない状態と考えられるタイプのものも観察できた。

 また、RANKLを腹腔内投与し、2日後に観察したところ、骨表面上の成熟破骨細胞数は増加し(P=0.0040)、またそのほとんどが、骨吸収をしている状態になっていた。その後、ビスフォスホネートを投与すると、骨表面での成熟破骨細胞数は減り(P<0.0001)、残った細胞もまた、骨吸収をしていない状態に変わった。

 さたに、RANKLを静脈内投与したところ、投与後30分以内に、骨を吸収していない破骨細胞が骨を吸収している状態に変化することが分かった。この時、成熟破骨細胞の総数は変わらなかった。このことから、RANKLは破骨細胞の分化を促進するだけではなく、成熟破骨細胞の骨吸収の活性化にも関与していることが分かった。

 加えて、Th17細胞を投与したところ、成熟破骨細胞には同様な変化が認められた。この作用は、RANKL中和抗体によって阻害された。そこで、Th17細胞の破骨細胞にもたらす変化は、Th17細胞の膜上に発現するRANKLによって起こったと考えられた。

 菊田氏は、これらの結果を受けて「Th17細胞の膜上に発現するRANKLをターゲットにした、新たな治療薬の開発も考えられるのではないか」と語った。また、「破骨細胞が骨を溶かすまでの過程で色々なことが起こっており、骨組織内の細胞の動きなどをリアルタイムで実際に観察することは、関節リウマチの病態解明にとって重要だ」と指摘した。

(日経メディカル別冊編集)