共同演者でSchering Plough社のJo Annah Gambrell Jensen氏

 作用機序や薬物動態、投与経路の異なる生物学的製剤が出揃ったことにより、これからの関節リウマチ(RA)治療においては、生物学的製剤から生物学的製剤への切り替えの増加が予想される。しかし、気になるのはコストの問題だ。さまざまなパターンの切り替えに伴う費用対効果をシミュレーションした英オックスフォード・アウトカムズ社のBeth Woods氏らは、費用対効果において最も優れていたのはインフリキシマブを含む切り替えのパターンであったことを、6月16日から19日にローマで開催された第11回欧州リウマチ学会(EULAR 2010)で報告した。

 Woods氏らが検討した切り替えパターンは、TNF阻害薬から別のTNF阻害薬(アダリムマブ、エタネルセプト、インフリキシマブのいずれか)に切り替えた場合と、TNF阻害薬から別のTNF阻害薬に切り替え、さらに抗CD20抗体(リツキシマブ:本邦ではRAに対しては未承認)に切り替えた場合である。同氏らは、これらのパターンで治療した場合にかかる生涯医療費と治療効果を仮想の患者においてシミュレーションし、新たな生物学的製剤を用いずに抗リウマチ薬(DMARDs)で治療した場合と比較した。

 なお、「仮想の患者」の背景因子は、TNF阻害薬不応例を対象としたゴリムマブ(本邦未発売)の臨床試験GO-AFTERの患者背景(年齢54.43歳、罹病期間12.37年、DMARDs使用歴2.81剤、ベースライン時のHAQ 1.61)に倣った。また、薬剤の効果は、GO-AFTER試験と、これまでに報告されたTNF阻害薬の臨床試験データより推定した。

 シミュレーションの結果、最初のTNF阻害薬治療に不応だった場合に別の生物学的製剤を用いず、DMARDs治療に移行した場合の医療費は2万8058.25ポンドと推計された。これに対し、アダリムマブに切り替えた場合は5万1249.52ポンド、エタネルセプトに切り替えた場合は5万315.19ポンド、インフリキシマブに切り替えた場合の費用は4万6687.62ポンドと推計された。

 一方、治療により得られるQALY(生活の質を調整した生存年)は、DMARDsが5.68年、アダリムマブが6.34年、エタネルセプトが6.30年、インフリキシマブが6.33年であり、TNF阻害薬への切り替えによる増分費用対効果(ICER:QALYを1年延長するために必要な追加費用)は、アダリムマブが3万5138.29ポンド、エタネルセプトが3万5898.29ポンド、インフリキシマブが2万8660.57ポンドとなった。

 また、他のTNF阻害薬への切り替え後にリツキシマブに切り替えた場合、リツキシマブ単剤への切り替えに対するICERは、アダリムマブを用いた場合で3万9084.04ポンド、エタネルセプトを用いた場合で3万9673.04ポンド、インフリキシマブを用いた場合で3万549.41ポンドとなった。

 以上の結果より、生物学的製剤の切り替えを考慮したRA治療において、インフリキシマブは最も費用対効果に優れた選択肢であることが示唆された。

(日経メディカル別冊編集)